日本YA作家クラブ会報 会員向けarchives 年二回発行
      
2011年から2013年の会報 

      
「日本YA作家クラブ」会報【臨時便】 新年会のお誘い編 2013年12月4日発行
  リレーエッセイ。第九回★木村航さん 『ベッドサイドの時間──「臨床児童文学」の試み』 
「日本YA作家クラブ」会報【定期報告便】第十回 2013年8月2日発行 
「日本YA作家クラブ」会報【定期報告便】第九回 2013年2月3日発行
  リレーエッセイ。第八回★梨屋アリエ『共感と共有と協働する読書~読書ワークショップの実践より』
「日本YA作家クラブ」会報【定期報告便】第八回 2012年8月3日発行 
「日本YA作家クラブ」会報【定期報告便】第七回 2012年2月5日発行
  リレーエッセイ。第七回★令丈ヒロ子さん 『ドイツで聞いた子どもの本のはなし(2)』
「日本YA作家クラブ」会報【臨時便】 イベント報告編 2011年10月7日発行
  『シンポジウム「子どもの物語・大人の物語」報告』
   風野潮さん越水利江子さん藤野恵美さん令丈ヒロ子さん
「日本YA作家クラブ」会報【定期報告便】第六回 2011年8月5日発行
  リレーエッセイ。第六回★令丈ヒロ子さん 『ドイツで聞いた子どもの本のはなし(1)』
「日本YA作家クラブ」会報【定期報告便】第五回 2011年2月20日発行
  リレーエッセイ。第五回★梨屋アリエさん『だって、YAが大好きなんだもん』
元のページへもどる  

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会報【臨時便・新年会のお誘い編】2013年12月4日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会員の皆様へ
 お変わりなくお過ごしでしょうか。
 【臨時便】をお送りします。
━━□ INDEX □━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆新年会のお誘い
◆エッセイ『ベッドサイドの時間──「臨床児童文学」の試み』 木村航さん 
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆新年会のお誘い。 
 来年1月、日本YA作家クラブは6年目に入ります。
本来ならば5周年のイベントを企画したかったのですが、準備不足で
動くことができませんでした。このままなにもしないのも寂しすぎますので、
このたび、ささやかな新年会の席を設けることにしました。
 また、参加者の見込みがつきましたら、具体的な場所などを
決めたいと思います。今回は、とりあえず、先に日程をお知らせいたします。
日時 2014年1月10日(金) 夜 六時半か七時くらい開始の予定
会費 5~8千円予定。
会場 東京都内。人数が確定してからお店を探します。
 発起人 金原瑞人、梨屋アリエ。 
 参加希望の方は、このメールに返信してお知らせください!
 未定だけれど参加の意思がある方もご連絡ください。
返信のあった方にだけ詳細をご連絡いたします。
 参加表明は1月5日までにお願いいたします。
japan.yung.adult.club@gmail.com(この会報のメールのアドレスです)
またはFAX03-6805-7707(梨屋)まで。
説明。
 日本YA作家クラブは、会員同士の交流を活動の目的に
しておりませんし、WEBでの活動を主軸にしているため、
リアルでの総会は予定しておりません。しかしながら、
今回は新年会という形で、顔合わせの場を作らせていただきます。
 ご都合がつきましたら、どうそご参加ください。
 今回も都内での開催になり、全国各地の会員さんの近くまで行くことが
できなくてたいへん申し訳ありません。いつかお会いできますように。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
┏★┓┏☆┓┏★┓┏☆┓┏★┓┏☆┓┏★┓
┃リ┣┫レ┣┫ー┣┫エ┣┫ッ┣┫セ┣┫イ┃
┗★┛┗☆┛┗★┛┗☆┛┗★┛┗☆┛┗★┛ 
第9回★木村航さん 
ベッドサイドの時間──「臨床児童文学」の試み 
                       木村航           
 前回のリレーエッセイで梨屋アリエさんから提案があった「臨床児童文学」
というキーワードについて考えてみたい。
 臨床児童文学。それはいったいなんだろう?
 エッセイの文中で梨屋さんは「本を読む人たちが、その経験や好きな気持ち
を生かして活動できる場がもっとできるといい」と書いておられる。してみる
と臨床児童文学とは、持病や事情を持ち、健康な子とは異なる体験をしている
子どもの立場からの発言なり活動をイメージした概念であり提案なのだろう。
 私自身、持病で幼い頃からベッド生活が長かったし、その経験は実作の中に
おのずから表れていると思う。が、そうした個人的な経験のことは後回しにして、
まず前回のリレーエッセイ中でも名前が挙がった「臨床哲学」という方法論に触れておきたい。
 臨床哲学は、臨床心理学を出発点とする試みのひとつ。その概念はこちら
のリンク先にまとめられている。
○臨床哲学 http://www.arsvi.com/d/cp2.htm[arsvi.com:立命館大学
グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点]より
 すとんと腑に落ちるものではない。というか、うまく言えないことを巡る絶え
間ない思索それ自体を無理やり名づけてみましたとでもいうような印象さえある。
その曖昧さゆえに多様な解釈を許す部分もあって、しかしそれが幸いしたのか、
さまざまな分野でケアに関わる人々が我がこととして応用し考えを深めた。
それらの知見と体験を取り込んで臨床現象学という概念も生まれた。これまで
「臨床××」といえば治療を行う側からみた技術としてのタームだったのに対して、
この新たな概念では、臨床現場で起きているすべてのできごとを等価な
ものとして重んじ、受け止め、考える。したがって語られる内容は多岐に渡り、
バラエティと彩りに富む。
 たとえば「当事者研究」という試みがある。困難を抱える患者が、自らが直面
する痛みや生きづらさを客観的にみた現象として捉え、それらの困難をどう克服
するかの取り組みを実験と位置づけて、研究論文のかたちにまとめる。実験だから
失敗もあり得るし、それもまたひとつの大事な結果だ。次に繋がるスタート
地点ともなる。このやり方は明るくていい。しくじったってしょんぼりしなくて
いいんだから。
 あるいはまた脳機能の障害で意識のない患者と、かれをケアする担当看護師との
間に、どのようなできごとが起こるかを調べた例。さらには重度障害児のリハビリ
を行う理学療法士が、子どもとの体験を踏まえて、その子にとっての「自分」とは
何かを考察した試み。いずれも自発的な意思表示のない相手との濃密なふれあいの
中から読み解かれ、つかみ取られた実感から紡がれた言葉だ。重厚なリアリティを
具えると同時に、豊かな想像力の広がりを併せ持つ。そこには新たな物語が芽吹いて
いる。当然だ。人と人とが出会うところにこそ物語は生まれるのだ。ましてやめったに
出会えない相手となら、ありふれた物語になるわけがない。
 むろんこれらの試みは、すべての当事者が「どうすればもっと居心地よく生きら
れるか」を考える過程で取り組んでいるものなのであって、明確な目的意識がある。
おもしろがってる場合じゃないのだ。だがあいにくどれもこれもどうしようもなく
否応なしにおもしろい。そうならざるを得ないのだ。そのことに気づいた版元も多く、
手軽な文庫や新書サイズで手に入る実践例もずいぶんと増えてきた。機会があれば
触れてみて欲しい。世界の広さと分厚さを実感できるだろう。
 さて、ひるがえって臨床児童文学の話である。
 ベッドの上には物語が生まれる。ましてや子どもならなおさらだ。とはいえ、
そこにはそれぞれの事情と病状とがあり、語られぬまま忘れ去られていく物語も
多いはずだ。
 ここでは試みに私自身の体験を語ってみたい。
 私の子ども時代は1970年代で、疾患や障害を持つ児童生徒の肩身は狭かった。
インクルージョン教育どころか通学免除が当たり前だった。障害児の教育は義務では
なかったのだ。私より上の世代の知人には文字が読めない人もいる。それでもその人の
語彙が乏しくならなかったのは放送メディアの恩恵だろう。一家に一台のテレビは
便利な子守役であり、社会への扉でもあった。もっともそれは恵まれた家庭に生まれて
いればの話だし、治療が長引くとなればまた話は変わってくる。
 私が持病の告知を受けたのは1歳の誕生日を迎えて間もない頃だったそうだ。以来、
幾度となく入退院を繰り返した。さいわい言葉が早く、人見知りもしなかったので、
病室でも楽しくやっていたらしい。しかしヒマだけはいかんともしがたい。必然的に
本を読むことになった。両親も惜しみなく買い与えてくれた。もっとも親が読ませた
がる名作童話のたぐいはちっとも好まず、もっぱらマンガと怪獣だった。折しも怪獣
ブームで、出版物も次から次へと出ていた頃である。勤め帰りの父が病院へ駆けつけが
てら、売店のスタンドで買ってくる新刊の雑誌には、必ず怪獣の記事が載っていた。
父は吟味して選ぶわけでもなく手当たり次第に買ってくるのでおとな向けの雑誌も
混じっていた。『世界怪物怪獣大全集』(大伴昌司・編/キネマ旬報社)は薄暗い
病室で読んだ覚えがある。おそらくは出てすぐのことだろう。復刻版の奥付を見ると
3歳にも満たない頃だ。むろん漢字なんかろくに読めなかったが、写真を眺めている
だけで満足だった。
 学齢に達してからも通学なんか考えられない状態だったが、地元の小学校でも
気にかけてくれて、ありがたいことに訪問教師の先生を派遣してくださった。
週に一度か二度だったと思う。九九がなかなかおぼえられなくて、延々とやっていた。
 それに先立つ入学時、校長先生と学級担任の先生の来訪を受けたことがあった。
教科書を届けてくださったのだが、同時にオープンリールのテープレコーダーを持ち
込まれたのには驚いた。声のおたよりを録音し、クラスメイトに聞かせたいという。
何をしゃべったかは記憶にないが、教科書を朗読させられたのはおぼえている。
「ねずみのよめいり」だった。途中で読み間違えて、適当にセリフを足してつじつま
を合わせたが、思えば小賢しいことをしたものだ。その後、クラスメイトからは
色とりどりのお手紙が届いたが、返事は出さなかった。何を書いたらいいのか
よくわからなかった。「おともだち」というものに実感が湧かなかった。心配した
両親は何度か近所の子どもに声をかけ、遊びに来てもらったりもしたのだけれど、
なかなか続かなかった。おとなの前で利発そうなふるまいをするのは得意でも、子ども
同士となるとからきしだめだった。
 全寮制の養護学校へ入学したのは小3の三学期から。申請は早くに出していたのだが、
ベッドに空きがなく、そんな中途半端な時期になってしまった。
 ここには図書室があった。ずいぶん入り浸ったものだ。
 しかしまじめな本よりも、まず真っ先にマンガだった。しかも回し読みだ。なにしろ
子どもの絶対数が多かった頃である。月に2回の面会日に来られる家族はたいてい
手土産にマンガ雑誌やコミックスを買ってきた。食べ物の持ち込みは厳禁だったし、
オモチャは高い。マンガ雑誌は値段的にも手頃だし喜ばれるのだ。おかげで主な銘柄の
マンガ雑誌は週刊月刊少年少女幼年向けからオトナ向けまでひととおりそろうのが
常だった。あとはみんなで替わりばんこに読みふける。勉強なんかやってるヒマはない。
いちおう日課には自習時間が入っていて、この間は「静かに勉強」「マンガ禁止」と
されていたが、せいぜい学研の科学や学習を開いてみる程度だった。私は、だ。みな
不真面目だったわけではない。入園児の病状や境遇にはずいぶんばらつきがあったし、
年齢層もさまざま。当然、進路にも学習態度の切実さにも違いは出てくる。普通高校への
進学を考えている者にとっては、やかましいガキどもの極楽トンボぶりはさぞ
目障りだったことだろう。
 病棟は常に満床だった。現在なら普通校で学ぶことになんの支障もない子でも、当時は
親元を離れて寮暮らしをする他に選択肢がなかった。また普通校に在籍中の子でも、
短期間だけ入園して手術とリハビリを受け、元の学校へ戻っていくケースが多かった。
地元の病院では対応できなかったのだろうし、積極的に受け入れてもいたのだろう。
子ども時代の時間は貴重だ。社会復帰のタイミングは進路を決めることにもなりかね
ない。おかげで転校生の出入りは日常茶飯事だった。たいていの物語では大事件として
扱われるけれど、別に珍しくなかったしなあ……ぐらいの温度で受け止めてしまう。
 病状によってはベッドを離れられない子も多い。私もそうだった。そういう子の
ためにはベッドサイド学級が編成される。訪問教師の先生とおんなじように、先生が
ベッドまで出向いてくださるのだ。クラスメイトは少なく、手術のケースや術後の
リハビリ経過によって顔ぶれは頻繁に入れ替わる。
 私にとってさいわいだったのは、入学して最初の2年ほどの間、ベッドを並べて
共に学ぶ仲間がいたことだ。
 カドくんと呼ばれていた。暴れん坊だった。幼い頃の事故で一命を取り留めた
ものの脊髄損傷となったという。両脚に重りをつけ、牽引ケアを受けていた。確か股関節の
拘縮か脱臼かの整復目的で受けているケアだったと思う。父親は渡りの板前で、山形か
どこかのホテルに家族で住み込んでいた頃、幼いカドくんは貨物用エレベータに忍び
込んで遊んでいて事故に遭ったのだそうだ。陽気なガキ大将タイプで、慕ってくる友だちが
たくさんいた。だが、ふとした折りに見せる表情に陰があった。負けん気の強い性格
だっただけに、どこか投げやりになることで自分を守るようなところもあった。
 最初の友だち、と呼べる存在があるとしたら、それは間違いなくカドくんだろう。
 いろいろあった。楽しいことばかりではない。理不尽なこともあった。殴られもした。
しかしそれらのどれにもこれにも無理もない理由があった。あまりにも幼く世間知らず
だった私は、カドくんに揉まれて初めていろんなことを教わったのだ。しかし今は
それらのすべてを書き記す余裕も準備も覚悟もない。
 遊ぶときもお互いベッドの上だった。
「遊ぶべ」
「いいよー。どのシリーズにする?」
「んだなぁ……」
 基本的にはごっこ遊びだ。カドくんと私、それぞれがひとり主人公を設定して持ち
キャラとし、アドリブの掛け合いで物語を作っていく。いくつものシリーズが並行して
走っていた。手持ちのおもちゃを主人公役として用いる場合もあれば、紙を切り抜いて
こしらえた人形を使うもの、さらにはそうした形代を使わず会話だけで展開する
シリーズもあった。SFヒーローものもあれば赤塚不二夫的なシュールギャグの応酬が
飛び交うものもあり、テイストはさまざまだった。かわいそうなヒロインが徹底的に
いじめられる涙ナミダのシリーズもあったが、ヒロインは古谷三敏『ダメおやじ』
(曙出版/小学館/双葉社など)初期のテイストで設定されていたから展開するのは
むろんギャグである。のちのテーブルトークRPGのような緻密なデータと乱数による
判定を伴うものではもちろんなかったけれど、あの経験は現在の私を形作る基礎に
なったと思う。
 思えば不思議な巡り合わせだ。カドくんは本来なら一級上の年齢である。大けがの
ために就学が1年遅れたせいで私と同級生になったのだ。たまたまベッド生活を送って
いる時期に私が入園し、同室となったのも奇縁としか言いようがない。遊びのシリーズを
始めたのも、どちらからともなく自然の成り行きでそうなっていた。環境のせいも
あっただろう。ふたつ並んだベッドとベッドの間には空間があって差し向かいには
なれない。ひとつの盤を囲むゲームには走れなかったということだ。橋渡しをするには
言葉しかなかった。語りあうしかなかった。想像ならば同じ場所に立てたのだ。
 そういえば本は「読む」ばかりではなく「読んで聞かせてもらう」ものでもあった。
年少の子や、病状の関係でページを開けない子に、ひまをみて読み聞かせをしてくれる
大人が何人もいた。指導員の先生、学校の先生、看護婦さん(あの頃は看護師とは
いわなかった)。じょうずな人もへたくそもいた。昔話を語り聞かせてくれる人も
珍しくはなかった。それにしてもなんでみんなあんなにお化けの話が好きだったん
だろう。話すほうも聞くほうもお化けばなしとなると妙にいきいきとしてくるのが
不思議だった。
 時には年長の子が「おはなし」の朗読を引き受けてくれることがあった。いつでも
あるイベントではない。たまたまそのとき在籍中の顔ぶれの中にふさわしい人柄の人が
いて、引き受けてもらえたらの話だ。よくおぼえているのは古館さんという人で、
体格も性格もおおらかな女子だった。とてつもなくおとなびてみえたが、今にして
思えば中等部の2年か3年のはずである。南部藩の家老の家柄だというが、しつけは
厳しかったのだろうか。普段は松葉杖を使っているが、リハビリ中はそれを手放し、
義足で危なっかしく歩いていた。右脚を膝上から切断したのがいつ頃かはわからない。
成長につれ、断端の再手術が必要になる。その何度目かの手術のために来ていた。
普通校への進学を控え、消灯後の自習に忙しい時期だったはずだが、誰が言い出したのか
「おはなし」の朗読を聞かせてとせがまれるとこころよく引き受けてくれた。
 大部屋だった。2列に並んだベッドの一方は男子、他方は女子。中学生でも
男女相部屋である。年長者は部屋の端にいて、そこからおおむね学年順に1列5、6人が
並ぶベッドの反対端が私のベッド。その真向かいのベッドは術後の患者の指定席で、
すぐ脇には看護婦さんの詰め所があった。古館さんのベッドはそこではなかったと
思うが、朗読の時には詰め所の明かりを求めて丸椅子持参でやってきて、窓辺に
腰掛けるのが常だった。朗読はいつも夜9時の消灯後、放送委員の子によるレコードの
音楽放送の後、毎晩10分ほど。音楽の選曲は委員に任されており、教材のライブラリに
あるレコードから選ばれるのだが、妙に悲しい曲ばかり流れるのがいやだった。
寝る前に『鉄道員』のサントラなんか聴かされたくはない。むろん「ぽっぽや」ではなく
イタリア映画のほうである。あのサイレン。なんて不吉に響くんだろう。だが古館さん
さえいれば怖くはないし寂しくもなかった。朗読はたいてい長篇童話で、切りの
いいところで翌日へ続く。松谷みよ子『まえがみ太郎』(福音館書店/現在は偕成社、
講談社など)の怖いこわい牛鬼の場面にどきどきしながら聞き入っても、不思議と
穏やかな心地になって眠れたものだった。
 こんな経験があれば、そりゃあ自分でもやってみたくなる。やがて年長になってから、
頼まれもしないのに勝手に始めた。つきあわされた下級生たちはいい迷惑だったろう。
なにしろリクエスト無視。朗読ですらない。好きで読んでいた落語や怪談を、うろ
おぼえのくせに思いつくままアドリブ入れつつ語って聞かせるだけなのだ。つじつま
なんかあうわけもない。怪談のつもりで始めたのになぜかご隠居と熊さんが出てくる
ような始末だ。
 語り手は聞き手がいるからこそ存在できる。物語は求められるところに生まれる。
そんな簡単なことにさえ気づいていなかったあの頃の私だった。
 以上、思いつくままよしなしごとを綴ってきたが、臨床児童文学というキーワードに
ついて考える一助になったかどうか。見当外れのような気もして自信はないが、
ひとつの昔話として読んでいただければさいわいである。
 ここまでつきあってくださった皆さんの中にもさまざまな体験があり、語るべき
物語があると思う。ここには場があり、よい聞き手/読み手が集まっている。どうぞ次回
リレーエッセイで存分に語っていただきたい。楽しみに待っています。
 最後に、臨床児童文学の参考になるかもしれない本をいくつかご紹介しよう。
『困ってるひと』(大野更紗/ポプラ社 2011/ポプラ文庫 2012)──闘病記ネオ。
話題作だからご存じの方も多かろう。勢いのある語り口で難病との闘いを笑い転げる
エンターテインメントに仕上げた。
『わかりやすいはわかりにくい?』(鷲田清一/筑摩書房・ちくま新書 2010)──副題は
「臨床哲学講座」。元々はNHKラジオ講座のテキストとして世に出たものを加筆・修正し、
新書としてまとめ直したもの。フェティシズムの視点からファッションを論じてきた哲学者は、
自らの介護体験から人の尊厳について深く考えるに至る。その思索の軌跡を、わかり
やすい言葉で語った1冊。
『べてるの家の「非」援助論 そのままでいいと思えるための25章』(浦河べてるの家/
医学書院 2002)──統合失調症患者のコミュニティを経済的に自立させ、地域社会をも
活性化してしまった事例として名高い北海道・浦河べてるの家は、当事者研究の実践でも
先駆的な人たち。多くの関連書籍があるが、これはコミュニティの成立に至る過程を前史から
綴った1冊。デンパの語りはいかにして論文化され、物語にまで昇華されたか?
『驚きの介護民俗学』(六車由実/医学書院 2012)──民俗学の研究者が学問の場を離れ、
縁あって介護現場へ。そこで出会ったお年寄りたちの記憶の中にはかつて誰もテーマに
しなかった豊かな民俗社会の体験があった。よき聞き手を得て初めて語られる、知られ
ざるあまたの物語の記録。叢書「シリーズ ケアをひらく」には良書が多く、他にも
『リハビリの夜』(熊谷晋一郎 2009)や『弱いロボット』(岡田美智男 2012)などはおすすめ。
『愛とカルシウム』(木村航/双葉社 2008/双葉文庫 2011)──拙著からも1冊。
介護施設しおかぜ荘シリーズの第一作。全身が石化する奇病を患った少女がスズメの
雛を拾う。だが彼女は「きれいな死に方」を探し求めていて……。
 
※梨屋からコメントつけさせていただきます。
前回書いた臨床児童文学という言葉の臨床は、病床という意味では使っていませんでした。
単に、理論上の文学ではなく人に接する文学体験というつもりでした。
臨床哲学に関しても、大阪大学などで行われているような哲学カフェやP4C等を意識したものです。
誤解を与える書き方をしたことを反省しています。
( ^^) _旦~~ φ(..) エッセイ募集中。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会報 2013年12月4日発行
代表世話人。金原瑞人、梨屋アリエ、(敬称略五十音順)
日本YA作家クラブ
http://jya.iinaa.net/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
連絡係 ありりん
このページのtopへもどる 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会報【定期報告便】 2013年8月2日発行
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
「日本YA作家クラブ」会員の皆様へ 
「日本YA作家クラブ」が発足して5回目の夏になりました。
 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。 
「日本YA作家クラブ」第10回の会報をお届けいたします。 
この会報は、総会の役割を兼ねております。必ず必須事項をご記入の上、 
ご返信して下さいますようお願いいたします。 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
★お願い★ 最後までお読みになりましたら、下の必要事項を記入して、 
このメールに返信してください。 
著作リストは、確定している情報をお願いいたします。 
ご返信はなるべく十日以内でお願い致します。 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
【1】会員名  
【2】著作リストの更新 なし / あり (ご記入ください) 
【3】ご意見、ご要望、ご質問など、ございましたら。 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
━━□ INDEX □━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
◆報告・問い合わせ 
◆著作リストの更新について 
◆インタビューのコーナー、第2弾進行中 
◆会員の募集と告知、情報ブログについて 
◆お知らせ
 =-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- 
◆報告・1 情報ブログを変更しました。 
これまで利用していたhttp://jyawc.blogspot.jp/の使い勝手がよくないので、 
4月からgooのブログに引っ越しました。記事から、ツイッターなどで告知しやすく、 
検索ワードにも出やすくなりました。 
「日本YA作家クラブ情報blog」http://blog.goo.ne.jp/yungadult 
◆報告・2 クラブへの問い合わせ(2013年2月~2013年7月) 
進学塾から著作物使用申請のために会員の連絡先を知りたいとメールをいただきましたので、
 該当の本の編集部を通してご連絡していただくようお返事いたしました。
 翻訳家になりたいと強く思っているという方から、講座などをしているか、 
電話で対応しているか等の問い合わせがあり、当会の主旨をお伝えするとともに、 
「ちゃんとやりたいのなら翻訳スクールに通うのがいい」という金原瑞人さんからの 
アドバイスと、金原さんが朝日カルチャーで翻訳講座をしていること、
 翻訳を勉強している人たちの会のサイトがあることをご紹介いたしました。 
都立図書館から梨屋あてに問い合わせがありましたので、個人のメールアドレスを 
お知らせしました。 
私立中学校から著作物使用申請のために会員と連絡をとりたいとメールをいただきました。 
出版社経由で連絡が取れなかったということでしたので、確認のために会員にメールを転送し、
 連絡を取っていただきました。 
都内の区立図書館から、中学校の文芸部と連携をとったYA世代向けの事業で 
講演会をしたいとのことで、指名の会員に連絡を取りました。 
都内の区立図書館から、区立中学校教育研究会の国語科研究部主催による 
「書評座談会」の講師を招きたいということで、指名の会員に連絡を取りました。
 =-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
 ◆著作リストの更新について 
著作リストは年2回(2月/8月)更新いたします。 
更新したい項目、付け加えたい情報、訂正などを お知らせください。
新刊の冊数の制限はいたしません。 
これまでのリストの掲載情報に関しては、ホームページにて ご確認ください。 
『タイトル』(出版社/2013年) のように、出版社出版年もご記入ください。 
更新時に未刊行のものはご遠慮ください。 
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- 
◆インタビューのコーナー第二弾進行中。 
YA世代や作家や翻訳家を目指す人に向けた 
会員へのインタビューコーナー第二弾の「YAバトン2」、
 2012年4月から逆五十音順に掲載をスタートしています。 
ご協力をお願いいたします。 
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
 ◆会員の募集と告知のお願いについて。 
会員の皆さまにも、「日本YA作家クラブ」の告知のご協力を お願いします。
個人でホームページやブログをお持ちの会員さんは、 
『日本YA作家クラブ』へのリンクをお願いいたします。 
情報ブログについて
 「YA情報ブログ」には、YAに関する講演会やサイン会、講座などの情 報を掲載します。
会員のYAに関する講演会やサイン会の情報を、 連絡係にお寄せ下さい。
YAにかかわるものでしたら、「日本YA 作家クラブ」の関与にかかわらず掲載致しますので、
どうぞお気軽に。 
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- 
◆お知らせ ★日本YA作家クラブのFacebookページがあります。
 https://www.facebook.com/pages/%E6%97%A5%E6%9C%ACYA%E4%BD%9C%E5%AE%B6%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%96/175276082532366?ref=hl
 「いいね」をよろしくお願いいたします。
 ★リレーエッセイ募集。( ^^) _旦~~ φ(..)  
第11回会報(2013年2月)に掲載するエッセイを募集します。 テーマはYAに関することなら何でも。
400字~長文も可。 また、これまでの会報のリレーエッセイを受けた内容のエッセイも 募集いたします。
 お寄せいただいた作品は臨時便や定期の会報に掲載いたします。 会報はホームページ上でも公開されます。
 世話人から御執筆のお願いをすることがあります。
 ※原稿料はお支払いできません。無償でのご協力をお願いいたします。
 =-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
「日本YA作家クラブ」会報 2013年8月2日発行 
代表世話人。金原瑞人、梨屋アリエ(敬称略五十音順) 
日本YA作家クラブ http://jya.iinaa.net/ 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
連絡係 ありりん

 このページのtopへもどる 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会報【定期報告便】 2013年2月3日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会員の皆様へ
寒い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
「日本YA作家クラブ」第9回の会報をお届けいたします。
この会報は、総会の役割を兼ねております。必ず必須事項をご記入の上、
ご返信して下さいますようお願いいたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★お願い★
最後までお読みになりましたら、下の必要事項を記入して、
このメールに返信してください。
著作リストは、確定している情報をお願いいたします。
ご返信はなるべく十日以内でお願い致します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】会員名 
【2】著作リストの更新 なし / あり (ご記入ください)
【3】ご意見、ご要望、ご質問など、ございましたら。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━□ INDEX □━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆報告・問い合わせ
◆著作リストの更新について
◆インタビューのコーナー、第2弾進行中
◆会員の募集と告知、情報ブログについて
◆お知らせ
◆リレーエッセイ。第8回★梨屋アリエ
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆報告・1 クラブへの問い合わせ(2012年8月~2013年1月)
東京都内のある区の図書館から、区立中学校教育研究会の国語科研究部主催による
「書評座談会」の講師招聘についてのご相談を頂きましたので、
ぜひこの人に、と会員を指名していただければ、お取り次ぎいたしますとお伝えしました。
また、会員以外の作家の場合は、本を発行した編集部に
電話や手紙などでお問い合わせいただければ、担当者から
作家に取り次いでもらえること、担当者がシャットアウトする場合は、
猛烈にお忙しい方か、予算に厳しい方か、人前に出ない方針の方であることもお伝えしました。
ホームページやブログを開設しているかた、ツイッターをされているかたも
増えていますのでネットを検索してくださるようにもお願いいたしました。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆著作リストの更新について
著作リストは年2回(2月/8月)更新いたします。
更新したい項目、付け加えたい情報、訂正などを
お知らせください。新刊の冊数の制限はいたしません。
これまでのリストの掲載情報に関しては、ホームページにて
ご確認ください。
『タイトル』(出版社/2013年) のように、出版社出版年もご記入ください。
更新時に未刊行のものはご遠慮ください。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆インタビューのコーナー第二弾進行中。
YA世代や作家や翻訳家を目指す人に向けた
会員へのインタビューコーナー第二弾の「YAバトン2」、
2012年4月から逆五十音順に掲載をスタートしています。
ご協力をお願いいたします。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆会員の募集と告知のお願いについて。
会員の皆さまにも、「日本YA作家クラブ」の告知のご協力を
お願いします。個人でホームページやブログをお持ちの会員さんは、
『日本YA作家クラブ』へのリンクをお願いいたします。
情報ブログについて
「YA情報ブログ」には、YAに関する講演会やサイン会、講座などの情
報を掲載します。会員のYAに関する講演会やサイン会の情報を、
連絡係にお寄せ下さい。YAにかかわるものでしたら、「日本YA
作家クラブ」の関与にかかわらず掲載致しますので、どうぞお気軽に。
直接ブログに書き込む場合。
googleのアカウントの登録(無料)をし、「書き込み登録」をすると、
情報がいつでも書き込めます。ご希望の方には、「YA情報ブログ」の
招待メールをお送りしますので、登録したいメールアドレスを明記して、
ご連絡ください。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆お知らせ
★日本YA作家クラブのFacebookページがあります。
https://www.facebook.com/pages/%E6%97%A5%E6%9C%ACYA%E4%BD%9C%E5%AE%B6%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%96/175276082532366?ref=hl
「いいね」をよろしくお願いいたします。
★リレーエッセイ募集。( ^^) _旦~~ φ(..)
 第10回会報(2013年8月)に掲載するエッセイを募集します。
テーマはYAに関することなら何でも。400字~長文も可。
また、これまでの会報のリレーエッセイを受けた内容のエッセイも
募集いたします。
お寄せいただいた作品は臨時便や定期の会報に掲載いたします。
会報はホームページ上でも公開されます。
世話人から御執筆のお願いをすることがあります。
※原稿料はお支払いできません。無償でのご協力をお願いいたします。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
┏★┓┏☆┓┏★┓┏☆┓┏★┓┏☆┓┏★┓
┃リ┣┫レ┣┫ー┣┫エ┣┫ッ┣┫セ┣┫イ┃
┗★┛┗☆┛┗★┛┗☆┛┗★┛┗☆┛┗★┛ 
第8回★ 梨屋アリエ
   
共感と共有と協働する読書~読書ワークショップの実践より   
梨屋アリエ
 昨年の11月に、世田谷文学館主催で『読書と星のワークショッ
プ』というイベントを行った。ワークショップとしたのは、通常の
読書会とは一味違うイベントを目指したからだ。集まったのは中高
生7名、一般6名の合計13名。全員女性。
 そもそも、このワークショップのきっかけは、JPICと朝日新聞
社主催の「オーサービジット校外編2011」の梨屋作品の読書会に見
学にいらしていた世田谷文学館のスタッフさんが、拙作の『プラネ
タリウム』の中に世田谷区の教育センターのプラネタリウムが登場
することを面白がってくれて、作品の舞台になっている教育センタ
ーのプラネタリウムを利用した読書会をしませんかと持ち掛けてく
ださったこと。実現までにはお役所的な紆余曲折があり、拙作『プ
ラネタリウム』の読書会とプラネタリウム鑑賞をセットにして会場
を分けて行うことになったが、どうせイベントをやるのなら面白い
ことをしたいとこちらからもアイデアを出した。かくしてイベント
は、参加者各自お弁当持参の一日がかりのものとなった。
 私が追加したのは、創作的なグループワークをすることと「星に
関係する本」を持ち寄って紹介することだ。
 全体での『プラネタリウム』の読書会の後、グループごとに『プ
ラネタリウム』の登場人物のような「不思議な登場人物」を考えて
もらった。不思議能力と悩み、名前などを各自が付箋に書き出して、
グループの中で確認し、まとめてもらう。さらに、その登場人物が、
星空やプラネタリウムを見たときにどんなことを感じるか。キャラ
になりきって、短いポエム、またはセリフを作ってもらい、模造紙
に書き出して発表するというもの。短い時間だったが、協力的な参
加者の皆さんのおかげで、個性的なキャラクターが仕上がった。(こ
の結果は、いずれ世田谷文学館がまとめると思うので割愛する。)
読書は好きでも自分でお話を考えたことはないという方には、この
キャラ&ポエムづくりは新鮮な体験だったようだ。この時のグルー
プ分けは無作為ではなく、世代別に分けた。事後アンケートでは大
人から「子どもと混ざりたかった」という意見が出たが、私として
は、子どもが年長者の意見に気をつかわず自由に発言できる環境で
行ってほしかったので、今回はこれで良かったと思っている。
 さて。このイベントでは、事前に『プラネタリウム』を読んでお
くという参加条件があった。そのため、「本が読める人」限定のイ
ベントとなり、参加するまでに越えなくてはならないハードルがあ
る。ごくわずかの人しか知らないマニアックな『プラネタリウム』
を指定されて集まるのなら梨屋ファンが集まったのかというと、実
はそうでもなかった。イベントのために梨屋作品を初めて読んだと
いう人が半数だ。とにかく、ふだん会うことのない初対面の人たち
が、共有する物語を持って集まったということで、参加者は立場を
超えて一人の読者として発言し、交流することができた。これは楽
しいのである。話を聞いて頭でイメージしているより、ライブの現
場はエキサイティングで本当に楽しい。
『プラネタリウム』収録の「あおぞらフレーク」には「恋の味がす
る空のかけら」が登場する。執筆時、恋の味をどんな味にしようか
悩んで書いたことを話し、参加者に「恋の味はどんな味だと思う?」
と質問してみた。こんな照れくさい問いかけなんて日常会話ではで
きないが、読書会なら大真面目に話題にできる。イチゴミルクやレ
モンなどと答えたのは恋なんて遠い日の花火の大人たちだった。「ま
だ恋をしたことがないからわからないけど……」と、ある中学生が
真剣に語ってくれたのは「ベルガモットの香りのチョコレート」。
その場にいたアダルトチームはその衝撃的でフレッシュな発言にハ
ッとする。なっなんて素敵な「大人」の恋のイメージなんだろう! 
(っていうか、いまどきの中学生はベルガモットがわかるのか! とい
う二重の衝撃)。
 その発言の前に「するめ」と答えていたアラフォーの女性は、「変
なことを言ってごめんなさい。自分が恥ずかしい」と涙をぬぐって
反省していた。中高生からは、(リキュールが入っている)ビターな
チョコレートの味という意見が多かった。恋とは、ほろ苦くて香り
豊かでムーディーで高級感のある大人の味らしい。大人のみなさん、
チロルチョコやアポロチョコや珍味じゃないベルガモット入りの恋
をしてきましたか!?
 ちなみに梨屋が考えた恋の味は、作品の中に出てきますので、ご
確認ください。
 それぞれが持ち寄った「星に関係する本」の紹介では、学習用の
図鑑を持ってくる人がいれば絵本や小説や写真集を持ってくる人、
江戸の天文学者の本を持ってくる人など、さまざまな本が集まった。
イベントの流れは文学から自然科学へシフトしていくようにしてい
たので、イベント終盤の教育センターのプラネタリウム鑑賞も、居
眠りする人もなく楽しんでいただけた。
 同じ本を読んで意見を交換したり、協働して創作したり、普段の
生活ではなかなかできない体験をし、刺激的な一日になった。初対
面だったのに、解散するときはみんな名残惜しくなっていた。事後
アンケートの満足度も非常に高かった。
 本を読む人たちが、その経験や好きな気持ちを生かして活動でき
る場がもっとできるといいなと思う。「孤読」するのも楽しいが、
それ以外の本の楽しみ方もたくさんあるのだ。近頃は、臨床哲学や
臨床科学という言葉がある。臨床児童文学というのも、楽しいと
思う。
( ^^) _旦~~ φ(..) エッセイ募集中。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会報 2013年2月3日発行
代表世話人。金原瑞人、梨屋アリエ(敬称略五十音順)
日本YA作家クラブ
http://jya.iinaa.net/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
連絡係 ありりん


このページのtopへもどる 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会報【定期報告便】 2012年8月3日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会員の皆様へ
猛暑が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
「日本YA作家クラブ」第8回の会報をお届けいたします。
この会報は、総会の役割を兼ねております。必ず必須事項をご記入の上、
ご返信して下さいますようお願いいたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★お願い★
最後までお読みになりましたら、下の必要事項を記入して、
このメールに返信してください。
著作リストは、確定している情報をお願いいたします。
ご返信はなるべく十日以内でお願い致します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】会員名 
【2】著作リストの更新 なし / あり (ご記入ください)
【3】ご意見、ご要望、ご質問など、ございましたら。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━□ INDEX □━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆報告・1、イベント 2、問い合わせ
◆著作リストの更新について
◆おすすめYAアンケートの終了について
◆インタビューのコーナー、第2弾進行中
◆会員の募集と告知、情報ブログについて
◆お知らせ
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆報告・1「日本YA作家クラブ」のイベントについて。(2月以降)
以前、メールで会員の皆さんにお知らせした、被災者支援のための
YAアンソロジー『Tomo』が3月に完成しました。
Tomo: Friendship Through Fiction An Anthology of Japan Teen Stories
(友:物語で結ばれる心 ティーンのための日本ゆかりの短編集)
Edited and with a Foreword by Holly Thompson
Available March 10, 2012
978-1-61172-006-8| $14.95 US $16.50 CAN |
Trade Paper | 384 pages | B&W illustrations
*also available as an eBook: 978-1-61172-518-6
http://tomoanthology.blogspot.jp/
 日本YA作家クラブの会員からは、片川優子さん、藤野恵美さん、梨屋アリエが
短編小説を無償で提供し、英訳されて収録されています。
印税は東北の被災地の高校生の英語教育の支援に使われます。
『Tomo』はAmazonの「洋書」コーナーで購入できます。
◆報告・2 クラブへの問い合わせ
教材出版会社から著作使用の件で会員の連絡先の問い合わせがありましたが、
該当作の出版社の編集部を通して作者に問い合わせていただくようにお願いしました。
一般の方から、横浜、東京近郊でYAの創作、添削などの教室、講座を
教えてほしいという問い合わせがあり、
日本児童文学者協会の「日本児童文学学校」の講座と、通信添削。
日本児童文芸家協会「通信添削教室」。朝日カルチャー新宿の
「児童文学・ヤングアダルト実作塾」。公募ガイド社の通信添削のコース
などについてお知らせしました。そのほかは、インターネットで
「専門学校 作家」 や「小説 添削」で検索していただければ、
情報がたくさん出てきますので、ヤングアダルトという言葉は
使われていなくても、対応できる機関もあるのではないでしょうか、と回答しました。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆著作リストの更新について
著作リストは年2回(2月/8月)更新いたします。
更新したい項目、付け加えたい情報、訂正などを
お知らせください。新刊の冊数の制限はいたしません。
これまでのリストの掲載情報に関しては、ホームページにて
ご確認ください。
出版社出版年もご記入ください。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆おすすめYAアンケートの終了について
「おすすめYA」のアンケートのページを、ホームページで公開しておりましたが、
情報の更新が不ぞろいになってきたことやサイトのリニューアル作業に伴いまして、
8月で公開を終了いたします。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆インタビューのコーナー第二弾進行中。
YA世代や作家や翻訳家を目指す人に向けた
会員へのインタビューコーナー第二弾の「YAバトン2」、
2012年4月から逆五十音順に掲載をスタートしています。
ご協力をお願いいたします。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆会員の募集と告知のお願いについて。
会員の皆さまにも、「日本YA作家クラブ」の告知のご協力を
お願いします。個人でホームページやブログをお持ちの会員さんは、
『日本YA作家クラブ』へのリンクをお願いいたします。
情報ブログについて
「YA情報ブログ」には、YAに関する講演会やサイン会、講座などの情
報を掲載します。会員のYAに関する講演会やサイン会の情報を、
連絡係にお寄せ下さい。YAにかかわるものでしたら、「日本YA
作家クラブ」の関与にかかわらず掲載致しますので、どうぞお気軽に。
直接ブログに書き込む場合。
googleのアカウントの登録(無料)をし、「書き込み登録」をすると、
情報がいつでも書き込めます。ご希望の方には、「YA情報ブログ」の
招待メールをお送りしますので、登録したいメールアドレスを明記して、
ご連絡ください。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆お知らせ
★サイトのリニューアルを予定しています。
 ボランティアでホームページを作ってくださると言う方に、
サイトの新しいデザインをお願いしています。
★リレーエッセイ募集。( ^^) _旦~~ φ(..)
 第9回会報(2013年2月)に掲載するエッセイを募集します。
テーマは「YAに関すること」。400字~長文も可。
また、今号会報のリレーエッセイを受けた内容のエッセイも
募集いたします。
お寄せいただいた作品は臨時便や定期の会報に掲載いたします。
会報はホームページ上でも公開されます。
世話人から御執筆のお願いをすることがあります。
※原稿料はお支払いできません。無償でのご協力をお願いいたします。
★世話人について
 令丈ヒロ子さんが代表世話人を辞任することになりました。
  令丈ヒロ子さんからのメッセージ
 日本YA作家クラブ会員の皆様へ
 このたび私、令丈ヒロ子は、代表世話人を辞任させていただくことになりました。
 去年からの体調不良と、家族の病気があいついで、思うように活動する時間が
 とれなくなったことがその理由です。
 この会の立ち上げから、かかわらせていただき、大勢の作家さんや、翻訳家の
 方々にご入会いただき、いろんなアイデアやご意見、時にはイベントのお手伝いを
 していただいたことに深く感謝いたします。
 これからは会員として、微力ですが、会に協力させていただきたいと思います。
 会の運営のお手伝いや、新しい企画の協力など、してみたいという会員さん
 いらっしゃいましたら、いつでもお声掛けください。
 どうぞ、よろしくおねがいいたします。
代表世話人が、金原瑞人、梨屋アリエ(五十音順)の2名になりましたので、
一緒に会の運営をしてくださる会員さんを探しています。
お手すきの方、ご協力をお願いいたします。
世話人の内容としましては、会報の原案や会として発信する文書の確認等、
メールでやりとりするものが中心です。よろしくお願いいたします。
※「日本YA作家クラブ」への企画、ご提案、アイデアなどが
ございましたら、ぜひご相談ください。
      
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会報 2012年8月3日発行
代表世話人。金原瑞人、梨屋アリエ(敬称略五十音順)
日本YA作家クラブ
http://jya.iinaa.net/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
連絡係 ありりん

このページのtopへもどる 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会報【定期報告便】 2012年2月5日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会員の皆様へ
寒い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
「日本YA作家クラブ」第7回の会報をお届けいたします。
この会報は、総会の役割を兼ねております。必ず必須事項をご記入の上、
ご返信して下さいますようお願いいたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★お願い★
最後までお読みになりましたら、下の必要事項を記入して、
このメールに返信してください。
著作リストは、確定している情報をお願いいたします。
ご返信はなるべく十日以内でお願い致します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】会員名 
【2】著作リストの更新 なし / あり (ご記入ください)
【3】おすすめYAアンケートのリストの更新 (任意)
【4】新会員の推薦 紹介 (任意)。
【5】ご意見、ご要望、ご質問など、ございましたら。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━□ INDEX □━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆報告・1、イベント 2、問い合わせ
◆著作リストの更新について
◆おすすめYAアンケートの更新について
◆インタビューのコーナー、第二弾企画中
◆会員の募集と告知、情報ブログについて
◆リレーエッセイ。第7回★令丈ヒロ子さん
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆報告・1「日本YA作家クラブ」のイベントについて。(8月以降)
12月11日アクトシティ浜松で行われた
日本ペンクラブ主催のシンポジウム「世界と日本の子どもの本から」
 (司会:那須田淳氏)の後援として日本YA作家クラブが参加しました。
◆報告・2 クラブへの問い合わせ
埼玉県入間市立図書館より、日本YA作家クラブの会員に
講演会の出演の依頼があり、該当の会員に取り次ぎました。
さいたま市の市立小・中学校学校図書館司書とそのOGによる
自主研修サークル様より、日本YA作家クラブの会員に
講演会の出演の依頼があり、該当の会員に取り次ぎました。
東京都昭島市民図書館より、日本YA作家クラブの会員に
「中学・高校生読書フォーラム」講演会の出演の依頼があり、
該当の会員に取り次ぎました。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆著作リストの更新について
著作リストは年2回(2月/8月)更新いたします。
更新したい項目、付け加えたい情報、訂正などを
お知らせください。新刊の冊数の制限はいたしません。
これまでのリストの掲載情報に関しては、ホームページにて
ご確認ください。
出版社出版年もご記入ください。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆おすすめYAアンケートの更新について
「おすすめYA」のアンケートのページを、「YAの本棚」コーナーとして
ホームページで公開しております。差し替えや追加のご希望が
ございましたら、月末までにご連絡ください。
ホームページをご覧いただき、リストのフォーマットを整えて
お送りください。
アンケート集計後にご入会いただきました新会員の皆様には、
後日、アンケートをお送りいたしますので、ご協力をお願いいたします。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆インタビューのコーナー第二弾企画中。
YA世代や作家や翻訳家を目指す人に向けた
会員へのインタビューコーナー「YAバトン」をホームページに作り、
2010年4月から逆五十音順に掲載をスタートし、
2011年10月に一巡しました。
ご協力をありがとうございました。
ただいま、第二弾のインタビューを企画中です。
会員に訊いてみたい質問や、楽しいアイデアがございましたら
お寄せください。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆会員の募集と告知のお願いについて。
会員の皆さまにも、「日本YA作家クラブ」の告知のご協力を
お願いします。個人でホームページやブログをお持ちの会員さんは、
『日本YA作家クラブ』へのリンクをご協力お願いいたします。
情報ブログについて
「YA情報ブログ」には、YAに関する講演会やサイン会、講座などの情
報を掲載します。会員のYAに関する講演会やサイン会の情報を、
連絡係にお寄せ下さい。YAにかかわるものでしたら、「日本YA
作家クラブ」の関与にかかわらず掲載致しますので、どうぞお気軽に
直接ブログに書き込む場合。
googleのアカウントの登録(無料)をし、「書き込み登録」をすると、
情報がいつでも書き込めます。ご希望の方には、「YA情報ブログ」の
招待メールをお送りしますので、登録したいメールアドレスを明記して、
ご連絡ください。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆リレーエッセイ募集。( ^^) _旦~~ φ(..)
第7回会報(2012年2月)に掲載するエッセイを募集します。
テーマは「YAに関すること」。400字~長文も可。
また、今号会報のリレーエッセイを受けた内容のエッセイも
募集いたします。
お寄せいただいた作品は臨時便や定期の会報に掲載いたします。
会報はホームページ上でも公開されます。
世話人から御執筆のお願いをすることがあります。
※原稿料はお支払いできません。無償でのご協力をお願いいたします。
※「日本YA作家クラブ」への企画、ご提案、アイデアなどが
ございましたら、ぜひご相談ください。
      
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
┏★┓┏☆┓┏★┓┏☆┓┏★┓┏☆┓┏★┓
┃リ┣┫レ┣┫ー┣┫エ┣┫ッ┣┫セ┣┫イ┃
┗★┛┗☆┛┗★┛┗☆┛┗★┛┗☆┛┗★┛ 
第7回★令丈ヒロ子さん
 ドイツで聞いた子どもの本のはなし(2)
                         令丈ヒロ子
 日本ペンクラブ子どもの本委員会では、この三月に日本の児童書を
紹介するべくドイツを訪問。
 アニメ、コミックと子どもの本の関係についてをメインテーマにした、
イベントを行った後、ハンブルグにある出版社、CARLSEN(カール
セン)社を訪問してきました。 KLAUS HUMANN社長と編集者の
みなさんが待っていて、実にたくさんのことを教えてくださいました。
 カールセン社は1953年に創立。もともと、四コマコミックの新聞連載の
仕事がメインでした。それが戦後、コミックを一冊の本の形にして安い
値段で提供したのが大ヒット、1976年「TANTAN」のフランスでの
大成功が転機となり、80年代から児童書を手掛けるようになり、コミック
と児童書出版の会社として大きくなりました。
 日本のMANGA(ドイツでは、日本のマンガは非常に人気があり、
内容も評価が高いです。他のコミックとは別の扱い。リスペクトをこめて
「MANGA」と呼ばれ、他国のコミックとは区別されています。)、児童書、
もともとカールセン社のメインであった大衆むけコミックが、現在カール
セン社の三本の柱となっているとのことでした。
 ここで「オールエイジ」と言う言葉を説明してもらいました。
 ドイツについてから出版関係者、書籍関係者の口から、何度となく
「オールエイジ」という言葉を聞いていました。これは「ハリー・ポッター」
シリーズが、ドイツで大人気となり、児童書でありながら、大人も大勢
読んだということがきっかけ。12歳以上のすべての年齢層の読者に
支持される作品という意味で「オールエイジ」と呼ばれているのだと、
説明をうけました。
 このような広い年齢層に支持される大ヒット作が「パーシー・ジャクソン」
シリーズ、「トワイライト」シリーズと続いたので、「オールエイジ」という区分が
できたようです。
 ドイツの児童書には、YAという言葉も区分もないですが、「青少年向け」
という本の分け方はあるようでした。日本のYAについて森絵都さんや
那須田淳さんが説明されると、(子ども向けのレーベルで刊行されても、
大人の女性も支持することや、大人向けの文庫レーベルでまた年齢層の
高い読者に作品が広まったりすることが多いということで)どちらかというと
ドイツで言う「オールエイジ」に近い感覚ではないかと思う、と
おっしゃっていました。
 ハードカバーの文庫化とか、児童文庫のようなものはありますかと
たずねたところ、 ないこともないが、日本のように文庫レーベルは隆盛
ではないとのこと。
 それにはいろんな理由がありました。
 だいたい高校生向けの本は、ソフトカバーで比較的安い値段のものが多く、
これは高校生本人が本を選ぶので安い値段にした方が、買いやすいから。
 しかし、12歳以下の「児童書」は、本人が選ぶことより、大人が選ぶことが
多い。また、ドイツでは本を贈り物とすることが多く、そのため、児童書は
装丁が豪華で立派なハードカバーがメインとのこと。
 ドイツでは学校図書館がほぼなくて、しかも町の図書館も日本よりかなり
少ない。このことも12歳以下の子どもが自分で本を選ぶ機会が少ない
要因となっているようです。
(この時、ドイツ児童書作家さんからは、ドイツの子どもの本は、男の子向け、
女の子向けがとてもはっきりしているとおっしゃっていたのを思いだしました。
装丁は、女子はとにかくピンクや赤の本。男子は黒とか茶色、青。テーマも
タイトルもいかにも女の子向け男の向けというものが多く、そういうのはあまり
好ましくないし、もっと幅広く楽しめる作品作りをしたいと、その方はおっしゃっ
ていました。装丁を見ただけで、これは女の子むき……となどとハッキリわかる
ような本作りが多いのは、大人から子どもへのプレゼントとして本を選ぶ助けと
なっているのかもしれないですね)
 カールセン社ではこのあと、翻訳についての話になりました。日本の児童書や
一般小説でも、英語に翻訳された出版されたものは、出版、翻訳関係者に
読まれる確率が高く、そこからドイツ語に翻訳される可能性がぐんとあがる。
 ドイツでは翻訳物の作品はたくさん出ているそうですし、このエッセイ(1)で
紹介した児童書の賞でも、ノミネート作品には翻訳ものがたくさん入るぐらい、
翻訳作品に好意的です。 しかしMANGA以外は、日本語の壁はあつく、
日本語の児童書がダイレクトにドイツ語に翻訳出版されることは、まだまだ
少ないそうです。翻訳家という仕事が、経済的に確立していないことも
その理由の一つとのこと。
 長い時間、惜しみなくいろんなお話と忌憚のない意見やアドバイスをいただき、
玄関フロアにいるスパイダーマンやTANTANと別れを惜しみ、カールセン社
を後にしました。
 
 YAについては、ミュンヘン国際児童図書館の方々にも聞いてみました。
みなさんの意見をまとめると。
「青少年向け作品では、ファンタジー、リアルで若者の直面する問題を扱った
リアリスティック小説、歴史・政治・特に戦争のことをテーマにしたヘビーな
ノンフィクションなど、作品内容の幅は広くバラエティに富んでいる。ファンタ
ジーの中でも、社会的なテーマを扱ったものが増えている。これらの作品は
大人が読んでも読みごたえがあると評価されているものが多く、こういう大人が
読んでもおもしろい青少年向け小説は、オール・エイジとは言わないので、
日本のYAと言われるものは、こういう作品群のことではないか。」
 とのことでした。
 現在日本のYAと言われているものは、作家、翻訳家、評論家、出版関係者、
書店関係者でも「これ」という統一見解がありませんし、それぞれによって
イメージがちがいます。
 しかしこれらのお話を聞いたら、ミュンヘン国際児童図書館の方の言われる、
「あくまで青少年向けに書かれた」作品が、大人が読んでもおもしろいという
作品であった……という感覚が、わたしのイメージするYAに近いなと思いました。
 しかし、作者が子どもにも大人にも訴えるものがある作品を意図して書いて、
じっさいとても広い年齢層読者に支持された場合、それもYAじゃないか?と
言われたら、なんとも答えられません。
 逆に大人向けの作品が高校生に非常に悦ばれ支持されるのはYAじゃない
のか?
 また本は文庫化だの、挿絵や装丁のリニューアルなどで大きくイメージが
変わることがあり、同じ作品がのちに大人に大人気になったり、逆に低い年齢層に
支持されるようになっていったりという「時代の変化によってYA化した」ものも
あるかもしれないです。
 別にYAとはなにか?答えを出すために行ったわけではないのですが、ドイツで
YAや児童書のありかたについて、いろいろ考えさせられました。
 日本(関西空港)に無事帰って、一番にうどんを食べに行きました。かつおだしの
味が、体の隅々にいきわたり、ふわーっと気持ちも筋肉もほぐれました。
 昆布はドイツに持参していたので、昆布だしには飢えていなかったんですが……。
 かつおだしをのんだとたんに、頭が痺れたように眠くなり、死んだように寝て
しまいました。
今後、アジアでない場所に行くときは、かつおだしも持って行こうと思います。
 おわり
 
( ^^) _旦~~ φ(..) エッセイ募集中。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会報 2012年2月5日発行
代表世話人。金原瑞人、梨屋アリエ、令丈ヒロ子(敬称略五十音順)
日本YA作家クラブ
http://jya.iinaa.net/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
連絡係 ありりん

このページのtopへもどる


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 「日本YA作家クラブ」会報【臨時便・イベントレポート編】2011年10月7日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会員の皆様へ
 きんもくせいのかおりとともに、すっかり秋らしくなりましたね。
 9月に大阪で開催されたシンポジウムの件で、【臨時便】をお送りします。
━━□ INDEX □━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆シンポジウム「子どもの物語・大人の物語」について
◆令丈ヒロ子さん (パネリスト)
◆越水利江子さん (パネリスト)
◆風野潮さん  
◆藤野恵美さん 
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆シンポジウム「子どもの物語・大人の物語」について
平成23年9月24日(土)に大阪にて、日本ペンクラブ主催のシンポジウム
「子どもの物語・大人の物語」が開催されました。
日本YA作家クラブの会員さんがパネラーとして参加することから、
日本YA作家クラブも後援団体のひとつに入れていただきました。
シンポジウムホームページより。http://www.japanpen.or.jp/news/post_260.html
 【企画趣旨】
現在、子どもの物語作家が大人の文学への進出していく傾向が多くあります。
またYA小説が大人にもよく読まれています。かつてあったかのように見えていた
子どもの物語と大人の物語の違いがあいまいになりつつある現在、70年代から
「子どもの本の枠広げ」や「概念崩し」という言葉を使いながら、大人の物語から
子どもの物語へと多くの作品を取り入れてきた今江祥智氏、10代からプロの
マンガ家として人気を博し、大人のマンガへと活躍の場を広げてきた里中満智子氏
をお招きし、そこに現在、子どもの物語の中心で書き続けている越水利江子、
令丈ヒロ子両氏の子どもの物語への思いをつなげていきたいと思います。
【パネラー】今江祥智(児童文学作家)
里中満智子(マンガ家)
越水利江子(児童文学作家)
令丈ヒロ子(児童文学作家)
ひこ・田中(児童文学批評家)
【主催】日本ペンクラブ 【後援】朝日新聞社、大阪府子ども文庫連絡会、(財)大阪国際児童文学館、
(社)日本国際児童図書評議会、日本児童図書出版社協会、日本YA作家クラブ、
読売新聞社
この会報臨時便では、パネラーをされた方、当日参加した方の
レポートや感想などをお知らせいたします。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆令丈ヒロ子さん シンポジウム「子どもの物語・大人の物語」レポート
 2011年9月24日(土曜日)、午後二時より。
大阪産業創造会館・会議室Eにて、シンポジウムが行われました。
主催、企画は、日本ペンクラブ子どもの本委員会。日本YA作家クラブは後援
として参加。
 パネルディスカッション「子どもの物語・大人の物語」が行われましたが、メイン
パネリストは、今江祥智さん、里中満智子さん。進行はひこ・田中さん。
日本YA作家クラブからは、私、令丈と、越水利江子さんが参加させていただきました。
 日本ペンクラブ子どもの本委員会も、日本YA作家クラブも、関西では、初の
イベントでしたので、大変緊張いたしましたが、お天気にも恵まれ、おかげさまで
チケット(500円)完売、100人の会場は満員となりました。
 結果から申し上げますと、パネリストだけでなく会場からも発言や意見がとびかい、
予定終了時間を大幅に超過しても終わらず、今江先生が「あと六時間ぐらい、
続けたい」とおっしゃったほど、大変盛り上がり、熱気あふれるイベントとなりました。
 シンポジウムの内容で印象に残ったところ、またそれについての感想、ご意見などを、
パネリストの立場から、越水利江子さんと、会場からコメントをいただいた、風野潮さん、
藤野恵美さんにレポートを書いていただきました。お三方のレポートを合わせて
読んでいただければ、当日の雰囲気をよりリアルに味わっていただけるのではないか
と思います。
 ペンクラブ子どもの本委員会の委員長、野上暁さんのご挨拶のあと、ひこ・田中さんが、
今回のシンポジウムの主旨を説明されました。
―現在、児童書作家が大人の物語を書いたり、また、児童書として出版されたものが、
大人向けのレーベルで出版されて、人気を博している。子どもの物語と大人の物語の
境界線が、非常にあいまいになっている。その流れをさかのぼって考えてみると、
1970年代に、それまで大人向けのものと思われていた長編という形や、また内容の
小説が、どんどん児童書として出版されていた時代があった。その時代、理論社大長編
シリーズの仕掛け人であり、「ぼんぼん」「兄貴」などの話題作を書かれた今江祥智さんと、
また、16歳で漫画家デビューされ、今にいたるまで、子どもの物語を作り続けられている、
里中満智子さんに、その時代のお話をうかがいたく、来ていただいた。
令丈ヒロ子さん、越水利江子さんは、このお二人の作った物語を子ども時代に読んで
育ち、現在子どもにむけての物語を作っている作家として、来ていただいた。
 という内容でした。
 まず今江祥智さんがその時代のことを語られました。
―70年代までの子どもの本というのは、大人が子どもに期待する美しい無邪気で
純真な子ども像がベースにあったものが多かった。それまでの、「こういうものが
子どもの本」というイメージにとらわれず、自分や当時の編集者(理論社・小宮山
量平さん、福音館・松居直さん)と、「これも子どもに読ませたい」「これもきっと子どもは
理解できる」と、どんどん、おもしろいと思うもの、子どもに伝えたい大事なことが書いて
あるものを提供していった。その結果、上野瞭や、長谷川集平、倉本聰の作品が世に
出ることとなった。いい二人の編集者にめぐりあえてよかったと思う。
 また、里中満智子さんは、16歳、高校在学中にデビューされた当時の、少女漫画の
出版状況から話してくださいました。
―当時は大人の男性が少女漫画の編集者をしていた。女性編集者が、まず、
いなかった時代だった。そうすると、大人の男性が思う「少女が好む話作り」が
なされていた。そのころ、人気のある少女向けストーリーの定番が「心のきれいな
辛抱強い女の子が、ひたすら虐めや、厳しい環境に耐え、純真さを保ち続けている
うちに、状況が変わってめでたしめでたしとなる話」であり、事情により、はなればなれ
になっていたお母さんと偶然再会できたり、お父さんがお金持ちになって帰ってきたり…
というような話が多かった。自分の意思で状況を切り開き、考え行動する女の子の話を
えがきたかったが、なかなか採用してもらえなかった。なにか決断するとき、責任を
持って自分の失敗も引き受ける生き方を、女の子にしてもらいたかったし、そういう
ことの大事さを伝える話を書きたかった。また、人生に対して受け身の主人公の話を
好む読者だけではないはずと考えたので、採用してもらうために、あらゆる努力をした。
 ここで、会場にいらした、小学館と講談社をそれぞれ定年まで勤めあげられた
編集者さんにもマイクを回し、当時の状況を語っていただきました。
 実際、当時の漫画誌含む、子どもの本編集現場は、今江さん、里中さんの言われる
ような状況だったこと、また、特に少女漫画誌は編集者が厳しく、厳しい指導を受けた
漫画家が、泣きながら出版社の廊下を駆けていくのを何度も目撃したなどの、リアルな
話が出ました。
 
 子どもの本と大人の本には境界線はあるかということに関しては、パネリスト全員、
その境界線は引くのは難しいことであるし、引けないのではないか、という意見で
一致しました。(このあたりの詳細は、越水さん、風野さん、藤野さんのレポートを
ごらんになってください。)
 私が感銘をうけたのは、里中満智子さんの、次の言葉でした。
「子ども向けの本、大人向けの本という厳密な境界線はないとは思います。ただ、
子どもにあたえるの本を大人が作ろうとするとき、読者である子どもに、世の中の現実や
厳しさをあえて見せないようにしたり、楽園のような別世界を作って、世の中の冷たい
風をあてないようにしてやる……という本作りは、違うと思います。」
 このあと、話題はバラエティに富んだものになり、
・作家、漫画家、編集者、など、作り手が女である場合と男である場合の感覚の
ちがいについて。
・出版社に作家が企画を持ち込むときの交渉の心得。
・作品タイトルをどうやってつけるのか。
・越水さんと令丈が、子どものころ、どのような思い、どんな印象で、今江祥智さんや
里中満智子さんの作品を読んでいたか。
・会場の川島誠さんからの今江作品についての意見、感想、質問の数々。
 あっという間に時間がたち、今江祥智さんは、
「もっと話したかった。だまっている時間がつらかった。」
 とまで、言ってくださったのですが、終了の時間となりました。
 時間の都合で、質疑応答の時間も予定の半分以下となってしまいましたが、
会場からの質問も
・BL(ボーイズラブ)の感覚を児童書作家はどこまで意識してとりいれているのか?
・ひこ・田中さんの新刊「ふしぎなふしぎな子どもの物語」(光文社新書)についての
感想と意見。
・児童心理学の観点から見た児童書について。
 等、短い時間ながらとても幅広いものとなりました。
(このあたりのことも、越水さん、風野さん、藤野さんのレポートに詳しく、お三方の
ご意見とともに、書いていただいております。)
 終了後も、参加された方々から、おもしろかった、もっと聞きたかった、時間が
足りなかったなどのご感想をいただき、大変うれしく思いました。
                              以上です。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆越水利江子さん シンポジウム「子どもの物語・大人の物語」報告 
シンポジウム「子どもの物語・大人の物語」は、パネリストが今江祥智先生、
里中満智子先生&ひこ・田中さん&令丈ヒロ子さん&越水利江子でした。
ところが、客席がまた豪華。創作作家だけでも、川島誠さん、二宮由紀子さん、
野上暁さん、那須田淳さん、くぼひできさん、楠章子さん、藤野恵美さん、
宮下恵茉さん、しんやひろゆきさん、風野潮さん、服部千春さんなど。編集さんも
かなりいらっしゃいました。
里中先生は、とても楽しく、ユーモアをまじえながら沢山のお話をして下さいまし
た。
里中先生のデビュー当時、少女読者だった私にとっては、あの頃の少女漫画家の
切なくひたむきな姿が目に浮かぶようでした。
今江先生は、客席の川島誠さんとのやりとりで、会場が盛り上がりましたが、ご自身
は喋り足りなくて疲れられたとおしゃって会場を笑わせておいででした。私も実は
今江先生のお作品「あのこ」の素晴らしさを語りたくて、準備していったのですが、
その機会がなくて残念でした。
ここで少し書きますと「あのこ」には、今読んでもはっとさせられる新しさがありま
す。さらに、独特の表現の柔らかさと美しさは、現在の男性作家には見かけられない
ものです。ぜひ、ご一読ください。
しかしまあ、これだけの作家が集まれば、収拾が付く方がおかしいので、テーマとは
ややずれた方向に盛り上がったりもありました。
それで、テーマについて、少し発言したのですが、そのことについて。
今、児童書作家が一般小説のジャンルに流れていく傾向といわれていますが、実際
は、一般小説の世界で、少年小説や児童文学に近い物を書かれていた方は
これまでもいらして、たとえば、『キッチン』『つぐみ』の吉本ばななさん、『蝶々の纏足』
『ぼくは勉強ができない』『晩年の子供』の山田詠美さん、『龍は眠る』『弧宿の人』
などの宮部みゆきさん。
でも、このところの傾向は、エンタメ、ミステリーあたりでファンタジー手法ともい
える仕掛けが顕著です。
爆発的に売れている作家さんの多くは、まず設定で読者の目と心をひき寄せ、
一気呵成に読ませます。
『夜は短し歩けよ乙女』の森見登見彦さん、『しゃばけ』の畠中恵さん、『鹿男あを
によし』『鴨川ホルモー』の万城目学さん、あるいは『秘密』の東野圭吾さんなども、
いわばファンタジー手法です。これらは、児童書作家がこれまでやり尽くしてき
た手法に近いのです。
なぜ、児童書作家はそういう手法を使ったのか?
それは、子供に一気呵成に読んでもらい、ファンタジーに秘められた真実の
物語に出会ってほしいからでした。
子供は物語の最後に用意された感動のために、長々辛抱する読み方はできま
せん。だから、一気呵成に物語の世界へ引っ張り込まねばならないのです。
今、一般小説の作家たちが、同じ手法を多くの作品で使い始めているのは、
大人の読者といっても、純文学のような作品を読める人たちが圧倒的に減った
からだと思われます。
つまり、もともとあったそういう一般書の土壌に、さらに児童書の手法に近づいた
「種」が蒔かれて、児童書作家が一般小説を書くための畑は、どんどん耕されて
いるのです。
ですから、当然、児童書から一般書へ流れも大きくなります。
ではなぜ、逆流が少ないのかといえば、これも当然なのです。
一般書を書いていた作家が、児童小説を書く場合、大きな制約があります。
子供に分る言葉、子供への配慮を加味したストーリー作りをせねばならないと
いうことです。
しかも、そんな苦労をしても、一般書と児童小説では、その読者の数からいって、
たぶん刷り数も売上も、1桁か二桁は少ないので、間違いなく貧乏になります。
そんな悪条件のもと、わざわざ苦労してまで児童書を書いてくれる一般作家さんは
とっても少ないということでしかありません。
どっちが優れているわけでもなく、単純な理由です。
でも、本の作り方はどんどん児童書の手法に似てきてはいる、そういうことも、大人
の物語、子供の物語の境界線があいまいになっている理由の一つではないかと
私は思っています。
それと、最後の質問は「子供の物語とは、児童心理において、どういうものなのか
教えて下さい」というように、私は受け取ったのですが、それについては、今江先生、
里中先生はそれぞれに心に響くお答えをなさいました。
それで、私の思うことをここに記しておこうと思います。
子供の物語とは、今、大人が身に付けたあらゆる鎧を脱いでしまって、無力な
感性のみの人間になってみれば、少しは子供心がわかるのではないでしょうか。
教師や親という鎧、これまで身に付けた学歴や職業的技能といった鎧…そういった
あらゆるものを脱ぎ捨てなければ、子供の気持ちはわからないものです。
子供の心は、頭では理解できません。
ましてや、教えたり教えられたりできるものではなく、自分自身が裸の心になって
初めて、子供の痛みや喜び、優しさや強さがわかるものです。
子供の心とは? と、問いかける前に、自分が無力な裸の人間にならねば
なりません…というのが、私なりの答えです。


=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆風野潮さん シンポジウム「子どもの物語・大人の物語」を観て
 9月24日(土)、シンポジウム「子どもの物語・大人の物語」を観に行って来ました。
 いやほんとに、一観客として気楽に見させていただくつもりだったのに、まさか
あんなところで話を振られるとは……という話題に関しては藤野さんのレポートに
お任せするとして(汗)。物書きでもある一観客として感じたことを少しだけ書かせて
いただきます。
 まずテーマに即したお話では、先生方皆さん一様に「子供向けとか大人向けとか
(意識すること)なく書いていると思う」とおっしゃっていたことに、個人的にも納得し
ました。私も一般小説雑誌に連載したことがありますが、大人向けだからといって
書き方を変えた意識はありませんでした(使える漢字が多いとか、そういう差異は
把握していましたが)。
 そのほかには、
・子供と大人の境界線は、自分でも引くことは難しいし、まして他人には引けない
ということ。
・本になった作品としての「大人向け・子供向け」の区分は、書店の便宜上のもので
あるということ。
・子供の本の作家が一般書に進出していると言われるが、むしろ大人の作家さんが
児童書の書き方になっている、ということ。
等々のお話も、それぞれ「なるほどー」と納得しました。
 個人的に一番印象に残ったのは、里中さんが「誰かに頼ることを恥ずかしいと
自覚した時が、大人になった時ではないか」とおっしゃったことでした。自分の意識
の中での「自立」=大人になる、ということかな、と自分なりに理解しました。
テーマから脱線した話題(特に漫画の世界のお話)の中にも、書き手として参考に
なったことがたくさんありました。
 里中さんの「無理矢理やらされる仕事で気づくこともある。嫌いなジャンルが人気に
なりその時は嫌だったが、後で読み返して『面白いじゃないか』と思った」という
体験談や「12,3歳向けに描く時、15,6歳で出会うことを描く」というノウハウは、
大変参考になりました。苦手なジャンルのお仕事も、お断りせずに頑張ることで成長
できるのかもしれないな、と思いました。
 残り時間わずかなところでの「子供たちの心・行動をありのままに描こうとする時、
どういうことでそれが可能になっているのか?」という客席からのなんとも難しい
質問に対する、里中さんの回答に感銘を受けました。
「それぞれの作家がそれぞれの物語の中で、主人公の子供ひとりひとりを作り
上げていく。普遍的な上手いやり方は、ない。もし自分がこの子だったらと
考えて描いて(書いて)いく。個々の子供、個々の大人、がいるだけで、
ありのままの大人もありのままの子供もいない」
 本当にその通りだと思います。スパッとひとつの答えが出せるなら、物語は
ひとつだけでいい。明確な模範解答などないからこそ、私もほかの作家の
皆さんも、一作で終わらずに物語を書き続けることができるんだ……と、そんな
ふうに思いました。


=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆藤野恵美さん シンポジウム「子どもの物語・大人の物語」レポート
 平成23年9月24日(土)に大阪産業創造館で行われたシンポジウム「子どもの
物語・大人の物語」に参加してきた。
 パネリストは今江祥智氏、里中満智子氏、越水利江子氏、令丈ヒロ子氏で、
聞き手はひこ・田中氏。
 さまざまな興味深い話があったのだが、そのなかでも、今回は特に自分が関係
した部分についてレポートしたいと思う。
 それは質疑応答で出された「最近の児童文学ではBL的な読まれ方というのが
あると思うが、児童文学とBLの関係についてどうお考えか」という質問であった。
 補足をしておくと、BLとはボーイズラブの略称である。
 まずは越水氏が「新撰組はまさにそういう世界です」ということで、読者である
女の子たちもそれを楽しんで読んでいるし、自分も楽しんで書いているという発言
をされ、つづいて令丈氏は「古来よりのお家芸ですから」と日本の伝統文化的な
側面からさわりだけふれたのち「そのあたりについては、あちらの風野潮さんや
藤野恵美さんのほうがくわしいと思いますのでコメントしてもらいましょう」と聴衆側
の席へ予想外の振りをされ、マイクがこちらにまわってきたのだった。
 風野氏がデビュー作『ビートキッズ』への熱い思いを語られている横であせり
まくっていたのだが、ついに観念して「わたくしはBLというよりも、百合なのです
が」という、よもや児童文学を考える真面目なシンポジウムでこんな言葉を口に
しようとは……な一言からコメントする事態となり、女の子が好きな女の子が出てくる
『ぼくの嘘』という小説を講談社のサイトで連載中だと抜け目なく宣伝しておいた。
 そして、BLについては「上の世代のひとたちのときには、男同士というのが
禁断の愛で、男女間の恋愛にはない悩みや傷害があるからこそ盛りあがると
いうかBLでしか描けないものがあったように思うけれど、最近では男同士の恋愛も
ふつうに祝福されるし、あらゆるものがBL化され、消費されているように思えて
しまうこと。今江祥智氏の『概念崩し』などをふまえて、児童文学の枠組みが広がり、
解体されたいま、BLでもなんでもありで、タブーとされるものはなくなってきて、
だからこそ何を書いたところで驚かれない難しさがあるように感じる」との内容を
しどろもどろに言う。
 質問者の問いにきちんと答えられた気もせず、全然うまく言えなかったのだが、
こういう場で滔々と思うことをあますところなく発言できる人間なら、文章を書くなんて
手間のかかることをやっていないだろう。
 それはさておき、以上の流れを受けて、里中氏が、タブーがないという点では、
私たちがいまいる世界というのは、なにを書いても投獄されることもなく、非常に
恵まれた環境でものが書けるので、この自由な場をぜひとも守っていきたいという
主旨の発言で、非常にうまくまとめてくださった。
 議題に即した部分では、越水氏が子供の本と大人の本がボーダーレスになって
きているというところで「子供の本の作家が大人の本へと進出しているというより、
大人の本に子供の物語の手法で書かれたものが多くなってきている気がする」と、
森見登美彦氏の『夜は短し歩けよ乙女』や畠中恵氏の『しゃばけ』を例にあげら
れていたのが印象に残った。
 伝聞であるが、一般書の世界では「売れたければ中学二年生にわかるように
書け」などとまことしやかに言われているらしい。
 私の考える「大人の物語」というのは、読者から「面白くない」と言われたとき
に「この面白さがわからないのは、きみが未熟だからだよ」と返すことが
可能なものだ。
 大人の物語は「教養がなく、読解力も想像力も論理的思考力も鍛えられて
おらず、人生経験にも乏しく、行間も読めないような馬鹿は相手にしていない。
きみはまず、数多の本のうちから自分に見合ったものを識別して選び取ること
すらできない己の愚かさを恥じるがいい。顔を洗って出直してきたまえ」と厳しく
突きはなすことができる。
 でも、子供の本では、そんなことは言えない。子供が未熟なのは当たり前
だから。
 大人の本と子供の本の区分けについて、令丈氏は「書店や図書館で本を
並べるときの便宜上のものにすぎない」との発言をされていたが、ジャンルと
いうのはある種の品質保証であり、子供はそれが子供の本の棚に置かれている
ことで「子供の自分にも読めて、面白くて、いいことが書いてあるだろう」と期待して、
手に取るはずだ。その信頼を裏切りたくはない。
 だから、私は子供の本を書くときには、もし面白くないと言われたら「ごめんね。
どういうところが面白くなかったのかな? 次はもっと面白くなるように頑張って
書くから。これはきみには合わなかったけれども、本はほかにもいっぱいある
から、絶対に気に入るものがあるはずだよ。だから、本というものが全部つまら
ないとは決して思わないでね」と答えるような気持ちでいたい。
 大人の物語が「成熟した大人だけ」しか楽しめないのに対して、子供の物語が
「子供」と「かつて子供だった大人」までも取り込めるなら、数のうえでは有利
である。
 子供の物語のほうが、楽に読めて、面白くて、充実しているのだとしたら、
大人だってそれを楽しみたいというのは自然な流れだ。
 大人の権威が薄れ、大人ぶってもメリットはなく、成人した者が電車で
少年漫画誌を読んでいても白眼視されず、お子様ランチという言葉が悪口として
通用しなくなった社会では、大人の物語を求めるひとは少数派になりつつある
のではないだろうか。
 しかし、大人の物語でしか得られないものもあり、私はそれを読みたいので、
大人の本にはぜひとも頑張ってもらいたいところである。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
令丈ヒロ子さん、越水利江子さん、風野潮さん、藤野恵美さん、
お忙しい中、貴重なご報告をありがとうございました。
第六回会報の令丈ヒロ子さんのエッセイの続きは、第七回会報に掲載予定です。
( ^^) _旦~~ φ(..) エッセイ募集中。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会報 2011年10月7日発行
代表世話人。金原瑞人、梨屋アリエ、令丈ヒロ子(敬称略五十音順)
日本YA作家クラブ
http://jya.iinaa.net/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
連絡係 ありりん


このページのtopへもどる 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会報【定期報告便】 2011年8月5日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会員の皆様へ
暑い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
「日本YA作家クラブ」第6回の会報をお届けいたします。
この会報は、総会の役割を兼ねております。必ず必須事項をご記入の上、
ご返信して下さいますようお願いいたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★お願い★
最後までお読みになりましたら、下の必要事項を記入して、
このメールに返信してください。
著作リストは、確定している情報をお願いいたします。
ご返信はなるべく十日以内でお願い致します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】会員名 
【2】著作リストの更新 なし / あり (ご記入ください)
【3】おすすめYAアンケートのリストの更新 (任意)
【4】新会員の推薦 紹介 (任意)。
【5】ご意見、ご要望、ご質問など、ございましたら。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━□ INDEX □━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆報告・1、イベント 2、問い合わせ
◆著作リストの更新について
◆おすすめYAアンケートの更新について
◆インタビューのコーナー、更新しています
◆会員の募集と告知、情報ブログについて
◆イベントのお知らせ
◆世話人について
◆リレーエッセイ。第6回★令丈ヒロ子さん
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆報告・1「日本YA作家クラブ」のイベントについて。(2月以降)
7月31日、葛飾区立立石図書館開館記念読書会
「みんなで好きな本について語ろう!」を開催しました。
講師は片川優子氏、金原瑞人氏、梨屋アリエ(50音順)。 
参加者内訳は、小学6年1名、中学1年1名、2年1名、3年2名、
高校1年1名、2年1名、3年1名。社会人1名と、司書2名で、
全体で15人の会でした。
8月5日の学図研全国大会(兵庫大会)の
分科会5「YA作家と語ろう!」で、日本YA作家クラブの
香月日輪氏と令丈ヒロ子氏が講師をしました。
◆報告・2 クラブへの問い合わせ
さいたま市の市立小・中学校学校図書館司書とそのOGによる
自主研修サークル様より、日本YA作家クラブの会員を講師に
呼ぶことは可能かという問い合わせをいただき、回答いたしました。
学校図書館問題研究会鳥取支部より、8月の全国大会への
日本YA作家クラブの会員の講師依頼があり、
該当の会員に取り次ぎました。
板橋区立内の図書館より、日本YA作家クラブの会員に
「オーサートーク」出演の依頼があり、
該当の会員に取り次ぎました。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆著作リストの更新について
著作リストは年2回(2月/8月)更新いたします。
更新したい項目、付け加えたい情報、訂正などを
お知らせください。新刊の冊数の制限はいたしません。
これまでのリストの掲載情報に関しては、ホームページにて
ご確認ください。
出版社出版年もご記入ください。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆おすすめYAアンケートの更新について
昨年、会員の皆様にお願いいたしました「おすすめYA」の
アンケートのページを、「YAの本棚」コーナーとして
ホームページで公開しております。差し替えや追加のご希望が
ございましたら、月末までにご連絡ください。
ホームページをご覧いただき、リストのフォーマットを整えて
お送りください。
アンケート集計後にご入会いただきました新会員のみな様には、
後日、アンケートをお送りいたしますので、ご協力をお願いいたします。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆インタビューのコーナー連載中。
ホームページに、YA世代や作家や翻訳家を目指す人に向けた
会員へのインタビューコーナーを作り、昨年4月から、
令丈ヒロ子さんから逆五十音順に、月に二人ずつ掲載を
スタートしています。
該当月の会員さんには、メールにてご連絡いたしますので、
ご協力ください。よろしくお願いいたします。
五項目。
・どんな中学~高校時代を過ごしていましたか?
・作家・翻訳家になりたいと思ったのは、いつ頃、どうしてですか?
・最初の本(作品)を出版したきっかけはなんですか?
・一週間だけ中学~高校時代の自分と入れ替われたら、何をしますか?
・現役のYAな人達へ、熱いメッセージをどうぞ。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆会員の募集と告知のお願いについて。
会員の皆さまにも、「日本YA作家クラブ」の告知のご協力を
お願いします。個人でホームページやブログをお持ちの会員さんは、
『日本YA作家クラブ』へのリンクをご協力お願いいたします。
お知り合いの作家や翻訳家に、ホームページに記載されている条件に
合う方がいらっしゃいましたら、当会について、お知らせください
ますようお願いします。
YA作品であれば、児童・一般、文庫・新書・単行本の
しばりはございません。
情報ブログについて
「YA情報ブログ」には、YAに関する講演会やサイン会、講座などの情
報を掲載します。会員のYAに関する講演会やサイン会の情報を、
連絡係にお寄せ下さい。YAにかかわるものでしたら、「日本YA
作家クラブ」の関与にかかわらず掲載致しますので、どうぞお気軽に
直接ブログに書き込む場合。
googleのアカウントの登録(無料)をし、「書き込み登録」をすると、
情報がいつでも書き込めます。ご希望の方には、「YA情報ブログ」の
招待メールをお送りしますので、登録したいメールアドレスを明記して、
ご連絡ください。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆イベントのお知らせ
シンポジウム「子どもの物語・大人の物語」
主 催:日本ペンクラブ
後 援:読売新聞社 朝日新聞社 日本YA作家クラブ 
財団法人大阪国際児童文学館 大阪府子ども文庫連絡会 日本児童図書出版協会
日 時:9月24日(土) 午後2時~4時
場 所:大阪産業創造館会議室E
パネリスト:今江祥智氏、里中満智子氏、越水利江子氏、令丈ヒロ子氏。
聞き手:ひこ・田中氏。
詳細は http://jyawc.blogspot.com/2011/07/924.html
11月6日の板橋区立赤塚図書館での「オーサートーク」で、
日本YA作家クラブの大崎梢氏、片川優子氏、金原瑞人氏が講師をします。
※「日本YA作家クラブ」への企画、ご提案、アイデアなどが
ございましたら、ぜひご相談ください。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆世話人について
石崎洋司さんが5月付で退会いたしましたので、代表世話人は
金原瑞人、梨屋アリエ、令丈ヒロ子(五十音順)の三名になりました。
今後ともよろしくお願いいたします。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆リレーエッセイ募集。( ^^) _旦~~ φ(..)
第7回会報(2012年2月)に掲載するエッセイを募集します。
テーマは「YAに関すること」。400字~長文も可。
また、今号会報のリレーエッセイを受けた内容のエッセイも
募集いたします。
お寄せいただいた作品は臨時便や定期の会報に掲載いたします。
会報はホームページ上でも公開されます。
世話人から御執筆のお願いをすることがあります。
※原稿料はお支払いできません。無償でのご協力をお願いいたします。
      
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
┏★┓┏☆┓┏★┓┏☆┓┏★┓┏☆┓┏★┓
┃リ┣┫レ┣┫ー┣┫エ┣┫ッ┣┫セ┣┫イ┃
┗★┛┗☆┛┗★┛┗☆┛┗★┛┗☆┛┗★┛ 
第6回★令丈ヒロ子さん
 ドイツで聞いた子どもの本のはなし(1)
                         令丈ヒロ子
 今年3月、日本ペンクラブ子どもの本委員会のメンバーで、ドイツに
行ってきました。
 わたしと同じく、こどもの本委員会のメンバーであり、日本YA作家ク
ラブ会員でもある、ベルリン在住の那須田淳さんが、メインとなる企画
をみな段取りしてくださいました。ドイツの出版事情にくわしい那須田
さんは、以前からドイツに日本の子どもの本を紹介したいとおっしゃっ
ていました。日本語の児童書作品をドイツ語に翻訳して、それを出版す
るというのは、とても難しい。しかし、日本のマンガは非常にドイツで
評価が高く、おおぜいの若者が日本のマンガやアニメを見て育ってきて
いる。日本文化の研究や、日本語の勉強をしている学生も増えている。
今なら、日本のYAや児童書を積極的に紹介すれば、ドイツで出版される
可能性があるのでは。またそこから日本の子どもの本が、ドイツで親し
まれる糸口をつかめるのでは……ということでした。
ということで、行ってまいりました。
出発は3月15日。東日本大震災の直後です。
空路の非常な混乱と、飛びかうあやふやな情報、おさまらない余震の中
での出発でした。
実際、滞在中行ったことをあげてみます。
・ベルリン日独センターでの、「日本のアニメと子どもの本」をテーマ
にした二日間連続のイベント。内容は、映画「魔女の宅急便」(ドイツ
語版)、手塚治虫監督製作の短編映画を鑑賞。野上暁さんによる、日本
のマンガ史についての講演。森絵都さん、那須田淳さん、令丈ヒロ子、
それにドイツの人気児童書作家Sabine Luwdwigさんによる短いスピーチ
と、質疑応答。
・日本文化の勉強をしている、翻訳家志望の学生さんたちとの交流会。
・ライプチヒ・ブックフェアの見学。そこで日本のアニメやその原作マ
ンガを多くに紹介している「アニマニア」編集長とお話。出版エージェ
ントのかたとお話。
・「日本の映画とイラスト展」の企画である、森絵都さん原作の映画
「カラフル」を、ドイツの方々と共に鑑賞。
・児童書やコミックを出版している、ハンブルグのカールセン社訪問。
・ミュンヘン国際児童図書館訪問。
 そのほかベルリン在住日本人作家の多和田葉子さんや、六草いちかさ
んとの交流。哲学博士の福澤啓臣先生の案内によるベルリン大学内を見
学……と、3月24日ミュンヘンを飛び立つまで、実に盛りだくさんの
毎日となりました。
 そこで、お会いした方々に、日本の児童書の現状を積極的にお伝えし
てきました。那須田さん、森さんは日本のYAについて。わたしは主に児
童文庫に象徴される、児童書のエンターテインメントの現状について、
お話させていただきました。
 また、ドイツの子どもの本についてたくさんのことを教えていただき
ました。
 日本にない試みで、非常におもしろいなと全員が感心したのが、児童
書に送られる賞「DEUTSCHER JUGENDLITERATU
RPREIS」について、でした。
 これには絵本、子どもの本、青少年向けの本(ドイツにはYAという区
分のしかたはありません)、ノンフィクション、四つの部門から、その
年とても良かった児童書が選ばれ賞がおくられます。
 この賞の選考委員は、教育関係者、大学の先生、図書館員、書店員、
ジャーナリストなど。児童書に興味があり、くわしい人々が選ぶのです
が、出版社の社員、作家、画家、翻訳家は審査員になることはできませ
ん。理由は…まあ自分の作品や、自分に親しい人の作品、自社の作品、
ライバル社の作品には冷静に公平に審査できにくいからということで
す。(納得。)
 この賞には、さらに、青少年グループのみが審査員になる部門があり
ます。
13歳から17歳の子どもらだけで6つの読書グループを作り(1グル
ープ10人から20人で、3分の2ぐらいが女子だそうです)、青少年
向けの本を読みこみ、ノミネート作品を絞り込んでいくそうです。
 まったく大人の意見を反映せず、子どもらだけで話し合い、どの作品
を最終候補に残すのか、決めるそうです。
 毎年、この賞はノミネート作品をまずライプチヒ・ブックフェアで発
表。ノミネートされた本を紹介したブックレットを7万冊も配るという
のですから、ノミネートされるだけでも大変な名誉だそうです。(見せ
ていただいたブックレットはとても美しく、また紹介されているのは、
どれもおもしろそうな本ばかりでした。)
 そして、フランクフルトのブックメッセで、いよいよ授賞式。これが
毎年大変にぎやかで、大盛り上がりとなるそうです。
 この話を、ミュンヘン国際図書館の方にくわしく聞いて、うらやまし
くてため息が出ました。
この子ども審査員に作品を選ばれた作家は、どれだけうれしいだろうか?
日本でも、こういう賞ができたらいいのにねーっと、言い合いました。
          (2)へ続きます。
 
 
( ^^) _旦~~ φ(..) エッセイ募集中。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会報 2011年8月5日発行
代表世話人。金原瑞人、梨屋アリエ、令丈ヒロ子(敬称略五十音順)
日本YA作家クラブ
http://jya.iinaa.net/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
連絡係 ありりん


このページのtopへもどる      
      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会報【定期報告便】 2011年2月20日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会員の皆様へ
立春を過ぎ、春の気配を日差しに感じとれる今日この頃です。
「日本YA作家クラブ」第5回の会報をお届けいたします。
この会報は、総会の役割を兼ねております。必ず必須事項をご記入の上、
ご返信して下さいますようお願いいたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★お願い★
最後までお読みになりましたら、下の必要事項を記入して、
このメールに返信してください。
著作リストは、確定している情報をお願いいたします。
ご返信はなるべく十日以内でお願い致します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】会員名 
【2】著作リストの更新 なし / あり (ご記入ください)
【3】おすすめYAアンケートのリストの更新 (任意)
【4】新会員の推薦 紹介 (任意)。
【5】ご意見、ご要望、ご質問など、ございましたら。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━□ INDEX □━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆報告・1、イベント 2、問い合わせ
◆著作リストの更新について
◆おすすめYAアンケートの更新について
◆インタビューのコーナー、更新しています
◆会員の募集と告知、情報ブログについて
◆今後の企画について
◆リレーエッセイ。第5回★梨屋アリエ
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆報告・1「日本YA作家クラブ」のイベントについて。(8月以降)
1月5日に恵比寿にて新年会をいたしました。
(発起人・金原瑞人、梨屋アリエ)
参加者は会員8名、編集者6名、合計14名でした。
YA文学論や今後の国内外のYAの展望、出版業界の動向、
「日本YA作家クラブ」へのご要望などなど、活発な意見交換を
する予定でしたが、自己紹介の後は単純に楽しい飲み会となりました。
いずれまた、希望者を募り、このような機会を作りたいと思い
ますので、よろしくお願いいたします。
11月の臨時便でもお知らせいたしましたが、昨年秋に
東京都立図書館と日本YA作家クラブの共催で、
『中学・高校生のための 声に出して楽しむYA読書会
~みんなで好きな本について語ろう』を開催しました。
都立多摩教育センター 9月18日と9月25日
都立中央図書館 11月6日(10月30日は台風のため中止)
当日の様子を会のホームページでレポートしています。
http://jya.iinaa.net/report.htm
都立図書館のホームページでは、参加者の写真付の実施レポートがあります。
http://www.library.metro.tokyo.jp/j/2010ya.html (多摩)
http://www.library.metro.tokyo.jp/j/20101106ya.html (中央)
実施後の参加者アンケート。
多摩 http://jya.iinaa.net/event/toritu/quet.pdf
中央 http://jya.iinaa.net/event/toritu/quec.pdf
◆報告・2 クラブへの問い合わせ
一般の読者のかたから、海外の作家へファンメールを
送りたいとの問い合わせがあり、当会の対応できる範囲で
ご案内いたしました。
社団法人読書推進運動協議会機関紙「読書推進運動」516号の
巻頭エッセイ「若い人に贈る読書のすすめ」に、当会の紹介の
執筆依頼があり、世話人の相談の上、梨屋が対応しました。
神奈川県内の市立図書館から会員への講演の依頼をいただき、
該当の会員に取り次ぎました。
都内の教材出版社から中学生向けの国語の教材の出版の企画に
ついて相談したいとの問い合わせがあり、対応しました。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆著作リストの更新について
著作リストは年2回(2月/8月)更新いたします。
更新したい項目、付け加えたい情報、訂正などを
お知らせください。新刊の冊数の制限はいたしません。
これまでのリストの掲載情報に関しては、ホームページにて
ご確認ください。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆おすすめYAアンケートの更新について
昨年、会員の皆様にお願いいたしました「おすすめYA」の
アンケートのページを、「YAの本棚」コーナーとして
ホームページで公開しております。差し替えや追加のご希望が
ございましたら、月末までにご連絡ください。
アンケート集計後にご入会いただきました新会員のみな様には、
後日、アンケートをお送りいたしますので、ご協力をお願いいたします。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆インタビューのコーナー連載中。
ホームページに、YA世代や作家や翻訳家を目指す人に向けた
会員へのインタビューコーナーを作り、昨年4月から、
令丈ヒロ子さんから逆五十音順に、月に二人ずつ掲載を
スタートしています。
該当月の会員さんには、メールにてご連絡いたしますので、
ご協力ください。よろしくお願いいたします。
五項目。
・どんな中学~高校時代を過ごしていましたか?
・作家・翻訳家になりたいと思ったのは、いつ頃、どうしてですか?
・最初の本(作品)を出版したきっかけはなんですか?
・一週間だけ中学~高校時代の自分と入れ替われたら、何をしますか?
・現役のYAな人達へ、熱いメッセージをどうぞ。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆会員の募集と告知のお願いについて。
会員の皆さまにも、「日本YA作家クラブ」の告知のご協力を
お願いします。個人でホームページやブログをお持ちの会員さんは、
『日本YA作家クラブ』へのリンクをご協力お願いいたします。
お知り合いの作家や翻訳家に、ホームページに記載されている条件に
合う方がいらっしゃいましたら、当会について、お知らせください
ますようお願いします。また、作品を読んで、ぜひ仲間に! と
思われた書き手のかたにつきましても、情報をお寄せ下さい。
YA作品であれば、児童・一般、文庫・新書・単行本の
しばりはございません。
情報ブログについて
「YA情報ブログ」には、YAに関する講演会やサイン会、講座などの情
報を掲載します。会員のYAに関する講演会やサイン会の情報を、
連絡係にお寄せ下さい。YAにかかわるものでしたら、「日本YA
作家クラブ」の関与にかかわらず掲載致しますので、どうぞお気軽に
直接ブログに書き込む場合。
googleのアカウントの登録(無料)をし、「書き込み登録」をすると、
情報がいつでも書き込めます。ご希望の方には、「YA情報ブログ」の
招待メールをお送りしますので、登録したいメールアドレスを明記して、
ご連絡ください。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆今後の企画について
金原瑞人氏の発案で、YAの翻訳家の海外YAトーク第二弾を
夏以降に予定しています。詳細が決まりましたら、会報の臨時便や
YAブログ等でご案内いたします。
※「日本YA作家クラブ」への企画、ご提案、アイデアなどが
ございましたら、ぜひご相談ください。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆リレーエッセイ募集。( ^^) _旦~~ φ(..)
第6回会報(2011年8月)に掲載するエッセイを募集します。
テーマは「YAに関すること」。400字~長文も可。
また、今号会報のリレーエッセイを受けた内容のエッセイも
募集いたします。
お寄せいただいた作品は臨時便や定期の会報に掲載いたします。
会報はホームページ上でも公開されます。
世話人から御執筆のお願いをすることがあります。
※原稿料はお支払いできません。無償でのご協力をお願いいたします。
      
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
┏★┓┏☆┓┏★┓┏☆┓┏★┓┏☆┓┏★┓
┃リ┣┫レ┣┫ー┣┫エ┣┫ッ┣┫セ┣┫イ┃
┗★┛┗☆┛┗★┛┗☆┛┗★┛┗☆┛┗★┛ 
第5回★梨屋アリエ

だって、YAが大好きなんだもん             梨屋アリエ
「日本YA作家クラブ」の発足の半年後、児童書編集者と二人で、12歳
から19歳まで対象の読書会「YA読書クラブ」を作りました。本の好き
な子どもたちが、好きなことを活かして人と関われる機会があったら、も
っと読書が楽しくなるはず。学校の休み時間にアイドルやアニメの話で友
だちと盛り上がるみたいに、本の話で盛りあがる場を作ろう、という思い
でした。この読書クラブは三ケ月ごとに開催し、現在も続いています。
 昨年、都立図書館に企画を持ち込んだ「日本YA作家クラブ」の中高生
向けイベントも、会のPRとともに、そのような思いがありました。最初
は緊張していた子どもたちも、帰るときにはみな笑顔で、楽しかったと言
ってくれました。お手伝いができたことを嬉しく思います。でも、私には
ずっと気になっていることがあったのです。
「大人だって、好きな本について熱く語りたいです!」 子ども限定の読
書会の募集の案内をするたび、大人たちから「年齢制限がなければ、自分
が参加したかった」という声をたくさんいただいたのでした。読書が好き
な大人でも、普段の生活の中では、人とじっくり本の話をする機会がない
ようなのです。大人なら勝手に好きなところに行ける、と思っていたので
すが、既存の勉強会はちょっと敷居が高そうだし、そこに参加するための
ツテや情報が少ないのです。特にYA作品と限定されれば、ますますチャ
ンスは狭まってしまいます。
 誰かが声をかけさえすれば、集まりたい人がいる。だったら、誰でも参
加できるYAの読書会の場を新たに作ってみようかなぁ……また言い出し
っぺになるけど、まあいいか(苦笑)。試しに私のホームページやツイッ
ターなどを使って呼びかけてみたところ、読者さんや司書さんや編集者さ
んや作家さんなどから、反響がありました。本好きさんの熱い思いに背中
を押される形で、2010年12月に第一回「YA*cafe」を開催し
ました。この名称は、気軽にカフェに集まっておしゃべりをするイメージ
で名付けたもので、喫茶店を経営しているわけではありません。初回は、
14歳からベテランの大人まで、幅広い世代の男女17名が渋谷のカフェ
でおすすめのYAを持ち寄って、語り合いました。「YA*cafe」は
偶数月の最終日曜の午前中に今後も続ける予定です。YAが好きな方でし
たらどなたの参加も歓迎致しますので、ぜひ遊びにいらしてください。ht
tp://yacafe.chagasi.com/
 そんな経緯で、「日本YA作家クラブ」に続いて「YA読書クラブ」
「YA*cafe」というYAに関係した会ができました。
「梨屋さんは、どうして、わざわざそういうことをしようと思うんです
か?」と訊かれることがあります。確かに、私がやる必然はないのです。
決して、世話好きなのではありませんし、自信などまったくないのです。
言い出しっぺのなりゆきなので、力不足はご容赦くださいと開き直ること
で自分を保っている状態で、これまでも自問自答を繰り返してきました。
たぶん、私の行動のきっかけは、ただ漠然と、YAをもっと多くの人に知
ってしてほしいから、という理由なのだと思います。
 自分でははっきり気付いていなかったのですが、私はYAが大好きなん
です。思春期というものに興味があって、本にも興味があって、ちょうど
YAに当たる本もその若い世代の人たちのことも、面白くて特別に大切な
ものだと思っている。だから、もっとYAが楽しくて元気になるように、
関わって行きたいのだと思うのです。
 なのに、世の中には、私の大好きなYAに無関心で無理解な人が多すぎ
るのです。本の分類は子どもと大人の二分割ですから、若い人の本という
発想がない人がいます。大人の価値感覚の分厚い漢字だらけの本を、読み
なれていない若い人に平気で押しつけて、子どもが本を読まないと嘆く鈍
感な大人が、意外と多くいるみたいなのです。そういう「知的」なタイプ
の大人に、YAというのがあるんですよと教えようものなら、「私はその
年の頃、この程度の大人の本は読めていたわよ」と自慢をはじめてしまう
のです。そして、プライドはあるくせに自分の判断が信じられない大人は、
時や売上が評価した作品しか、子どもに手渡せません。良書と思いこんで
いる狭い範囲の作品しか、読むべき本として認められないのです。普段か
ら若い人の本を読んでいない大人が今の子どもにすすめられる本は、本人
が子どものときに読まされた20年も30年も前の本ばかり。そりゃあ古
くても良い作品はありますし、読める子は読めるでしょう。でも、それっ
て20年も30年も前の社会を知っていた人だから楽しめる内容の本なの
ではないですか、と私は少し疑問に思うのです。今の人に向けて書かれた
今の人の本も知ってほしい。「最近の若い人は+否定文」と同様に、若い
人のものを軽く見ることは本に限った風潮ではありませんが、YAの現実
は、見える人にしか見えていないのです。それって、もったいなくないで
すか。若い人が読書に触れるチャンスを、奪うことになりませんか。
 その一方で、自分の十代を振り返ってみれば、子どもたちは子どもたち
自身で読みたい本を探してきたのです。本を読むことに慣れさえすれば、
読むべき作品は自分で見つけられるのです。親の目には役に立たない馬鹿
馬鹿しい本でも、子どもはその本を読むことで、精神のバランスを取って
いるのかもしれません。もしも大人の期待に沿わない「つまらない本」し
か読んでいないのだとしたら、それはその本人がまだ「つまらない本」し
か面白く読めないからではないでしょうか。感じ方は、人から命令されて
変えることはできません。
 高校生のころ、私の本棚に並んだ小説を見た母が、「まったく、いつま
でもこんな本を読んで!」と嘆いたことがありました。一番目立つ所にあ
ったのが、怪しい宇宙人の表紙のSFだったのです。普段からまったく本
を読まない母に、本の何がわかるのかと思いましたが、侮蔑が含まれた親
の嘆きは、子どもの身にはとても傷つく一言で、自分の内面を全て否定さ
れたように、とても悲しく、悔しかったのを覚えています。私の親は私の
趣味の悪さを批判するだけで、本を手渡してくれたことは一度もありませ
んでした。押し付けがないのは、もしかしたら幸運だったのかもしれませ
ん。あのころに読んでいた本は、今では入手できない本ばかりです。でも、
夢中で読んでいた。大人になって、あの読書を振り返ってみても、私の人
生に無駄で無意味な読書であったとは、まったく思いません。むしろ、妙
な本ばかりよくぞ選んだ自分!と褒めてあげたいくらいです。あの読書が
なかったら、私は夢を持たず、本を読まない大人になってしまったはずで
すから。
 読むうちに、本の効能だけでなく、本に潜んだ害悪や無力さを知ってい
くのだって、読書の体験の豊かさだと思うのです。世の中にはいろいろな
本があり、いろいろな本の中からだれもが自由に選べて読める。それは、
とても大切なことだと思います。そのためにも、大人と子どもだけでなく、
若者向けの本だってたくさんあることを、みんなに知ってもらいたいので
す。
 話が長くなってしまいました。とにかく、私はYAが大好きなんです。
だから、YAを知っている仲間を増やしたいのです。この思いが、多くの
人に広がっていったらいいなあと思っています。
 
 
 
( ^^) _旦~~ φ(..) エッセイ募集中。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本YA作家クラブ」会報 2011年2月20日発行
代表世話人。石崎洋司、金原瑞人、梨屋アリエ、令丈ヒロ子(敬称略五十音順)
日本YA作家クラブ
http://jya.iinaa.net/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
連絡係 ありりん
このページのtopへもどる