日本YA作家クラブ主催トークセッション『訳者の語るロバート・ウェストール』 レポート (梨屋メモ)

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「訳者の語るロバート・ウェストール」第1回 2009年12月13日(日) 18:00開場 18:30開演 ジュンク堂書店新宿店
講師 原田勝さん×金原瑞人さん

 が、開催されました。   

(報告・梨屋アリエ 2009年12月)
メモの走り書きを参考にして書いたため、つたない報告ですみません。出演者の意図した言葉とニュアンスの異なる表現をしている可能性があります。
というわけで、転載・引用を禁じます。

  

第1回 メモ

2009年12月13日(日)
原田勝さん×金原瑞人さん

 原田さんは、翻訳家をめざす前、メーカーに勤務し、イラン-イラク戦争中のイラクで仕事をされていたそうです。
 ウェストールの『弟の戦争』は、翻訳家になった原田さんにとって二冊目の本。

 写真の左から、原田さん、金原さん。

金原さん。  ウェストールの文体について、どのような印象ですか。
原田さん。 センテンスが短め。リズムが速く、たたみかける感じ。読者の視点が主人公に重なっていくような、描写にもリズム感があって、主人公の頭の中の思いが入ってくる。 

 『弟の戦争』は一人称で、金原さんが翻訳した『かかし』『ゴーストアビー』は原書では三人称で書かれています。ウェストールの作品は、主人公の視点からの三人称が多いとのこと。
 そして、何度も舞台化された『弟の戦争』について、リーディングの時と訳しているときの読み方の違い、ウェストールの作品で何が好きか……と、お二人の話が進んでいきます。

金原さん。  ウェストールでは、戦争ものが一番好き。戦争のリアリティが浮き出ていて、町の様子が鮮やかに見えてくる。
原田さん。 ディテールが具体的で、商品名などを出してくる。注をつけたり、調べるのが大変(笑)。男性の持っている、モノに対する意味のないこだわりが、リアリティを生んでいる。戦争の善悪を語るときには必要がないが、男の子の心情をうまく描いている。
金原さん。  ウェストールは、男っぽい作家。そこが読んでいてたまらなくうれしい。

原田さん。 ウェストールは子どもの頃に空爆を受ける町で暮らしていた。戦争に対するまなざしは、向こう側とこちら側の窓口を見つけている。向こう側にいる民間人を想像させるところが特徴。
金原さん。  ウェストールのテーマは、戦争とゴースト。両者とも薄紙みたいなものの向こう側にいる者とつながっている。

それから、アメリカのYA作家、ロバート・コーミアとの違いについて。(原田さん訳『ぼくの心の闇の声』、金原さん訳『真夜中の電話』『ぼくが死んだ朝』)
原田さん。 二人は全く違う書き方。コーミアは、余計なものを排除して、金属的で無駄がない。ウェストールは無駄だらけで、生命力にあふれている。
金原さん。  コーミアは、はやく訳せた。
原田さん。 原書はコーミアの方が入ってくる。単語もやさしい。ウェストールは方言を使うことがあるので、細やかな訳者に当たった時は、良いと思う。
金原さん。  つまり、ウェストールは訳者に恵まれている(笑)。

そして、イギリスとアメリカの差について、イギリスのYAというジャンルについて、お話は続いていきました。

 会場からの質疑応答。

・『弟の戦争』で一番苦労した点は?
原田さん。 出だしの文の“I usesd him.”の訳を何回も変えたこと。
・タイトルや装丁を変えた理由は?
金原さん。  翻訳者に装丁を選ぶ権利は全くない。
原田さん。 編集部の中のアイデアです。
・金原さんの持っているかわいい鞄はどこで買ったのですか。……などなど、お客様からのたくさんのご質問やご意見等。

そして、サイン会……。

お疲れさまでした。楽しいトークセッションでした!

  

「訳者の語るロバート・ウェストール」第2回 2009年12月19日(土) 18:00開場 18:30開演 ジュンク堂書店新宿店
講師 野沢佳織さん×金原瑞人さん 

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